伊藤峻太×地曵豪×ウダタカキが語る、自主映画『ユートピア』の可能性 「“絶対にできないことはない”を証明した」

ウダ「『絶対にできないことはない』ということを証明したと思う」

ーーそうやって紆余曲折しながら10年以上もの歳月をかけて完成したこの『ユートピア』は、みなさんにとってどんな意味を持つ作品になりましたか?

(左から)地曵豪、伊藤峻太、ウダタカキ

地曵:僕は最初に台本を読んだときから絶対面白い作品になると思っていたし、今でも映画界において面白いことになると思っています。さっきアニメやSFが好きだという話をしましたが、例えば押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』も、劇場公開当初はお客さんが全然入らなくて上映もすぐに終わっちゃったんです。でもその後、アメリカの『ビルボード』ビデオ週間売り上げ1位になったのをきっかけに日本でも人気が爆発しました。押井監督の名作と言えば『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『機動警察パトレイバー 2 the Movie』だと思うんですが、それらの作品を観ていないような、特にアニメ好きではない映画ファンが『攻殻』公開後から数年も経ってから押井守を語るようになったんです。もしかしたら『ユートピア』もそれぐらい時間がかかってしまうかもしれないけれど、それぐらい僕はこの作品に可能性があると思っています。だから関わることができて本当によかったなって思うんです。

ウダ:僕は『風の谷のナウシカ』が大好きなんですけど、小学校3年生のときに初めて観たときにすごく衝撃を受けて、「ナウシカになりたい」と思ったんです。そうやってああいう世界観の話を撮りたいなと思う人って、世の中にはたくさんいると思うんですけど、予算も限られていてCGもどこまでできるかわからない、ましてやインディペンデントや自主映画で撮ろうなんてある意味現実的ではないですよね。やるにしても、もっと大きなバジェットの作品を撮れるまでキャリアを積むとか、ある程度設定を妥協するとか、多くの人はそういうことを考えると思うんです。でも、伊藤さんは実際10年かかっちゃったけど、やり遂げてしまった。実は最初にこの話をもらったとき、インディーズ映画で、しかもユートピア語というオリジナル言語を話さなければいけないと聞いて、「いやぁ、これはヤバい香りするわ」と思ったんです(笑)。でもやりたい気持ちもすごく分かったし、実際に監督と会って話してみたら、逃げずにやろうとしていることが伝わってきたので、俺もやってやろうと。昨今インディーズ映画も増えていますけど、こんな作品は他にないと思います。でもこの作品は「絶対にできないことはない」ということを証明したと思うので、作り手の方にも是非観ていただいて、今後こういう作品がまた現れてほしいなと思います。

伊藤:僕も自分で編集をしている段階で「これはすごいことになってる」と思ったんですけど、撮影時はこの作品がやっていることの大変さが全然理解できていなかったと思うんです。地曵さん、ウダさんをはじめとする役者の方々と一緒に作ったスタッフ、そして僕の10数年分のとてつもない念のようなものが、スクリーンから溢れ出てくる作品になっているので、是非たくさんの方々に観ていただきたいですね。

(取材・文・写真=宮川翔)

■公開情報
『ユートピア』
下北沢トリウッドにて公開中
出演:松永祐佳、ミキ・クラーク、高木万平、森郁月、吉田晋一、地曵豪、ウダタカキ
監督・脚本・VFX・編集:伊藤峻太
撮影監督・音楽:椎名遼
助監督:市原博文
制作:湯浅志保子
サウンドデザイン:小牧将人
プロデューサー:大槻貴宏
製作:「ユートピア」製作委員会(トリウッド、AXsiZ、芸術家族ラチメリア・カルムナエ)
配給:トリウッド
(c)UTOPIA TALC 2018
公式サイト:http://www.latichalu.com/utopia.html

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