「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ベルリン・シンドローム』
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。今週も先週に引き続き、リアルサウンド映画部の監禁担当・阿部が『ベルリン・シンドローム』をプッシュします。
『ベルリン・シンドローム』
道端に落ちている恋は拾わないほうがたいてい良い。一瞬で絡みつく誘惑を“運命”という言葉で正当化し、受け入れてしまったが最後だ。
4月7日公開の映画『ベルリン・シンドローム』は、ドイツに一人旅に出たオーストラリアのカメラマン、クレア(テリーサ・パーマー)と、現地で偶然出会った英語が話せるアンディ(マックス・リーメルト)の物語。アンディに恋をしたクレアは彼の部屋を訪れ、時を過ごすが、いつの間にか監禁されていることに気付き、脱出を試みる。
クリステン・スチュワートをはじめ、タイッサ・ファーミガ、リリー=ローズ・デップ、ウィノナ・ライダーなど血の巡り悪そう系女子がタイプなわたしにとってテリーサも好きな女優の1人で、『ライト/オフ』同様、本作での彼女の恐怖に顔を歪める表情は己のサディズムが掻き立てられる。
欲というものは、対象が枯渇すればするほど増す。砂漠で水を求めるごとく、一度好意を持ってしまった人間ならば、どんな酷い仕打ちを受けようと、そこにちらつく愛に正常な思考を奪われ、すべてを許してしまうことがある。本作のタイトルは、スウェーデン・ストックホルムで起きたノルマルム広場強盗事件を基に名付けられた、ストックホルム症候群(Stockholm syndrome)を彷彿させるが、本作にも被害者が犯罪者と長時間過ごすことによって、愛着が湧いてくるという心理が反映されている。
自分を監禁した敵への、愛情を消せない葛藤は痛いほどよく分かる。サスペンス・スリラーに収まらず、人間の愛を追及した新たな視点から恐怖を描くのはケイト・ショートランドの手腕を感じさせられた。また、テリーサの体つきが素晴らしく、スクリーンに手を伸ばしてしまいそうなほど肉感が良いので大画面で体感する価値あり。
余談だが、わたしはとある春に、道に迷ったふりをした人さらいに出会ったことがあるので、暖かくなり気持ちも高ぶるこれからの季節、道端の出会いには十分ご注意を。
■公開情報
『ベルリン・シンドローム』
4月7日(土)より新宿武蔵野館、渋谷シネパレスほか全国ロードショー
出演:テリーサ・パーマー、マックス・リーメルト
脚本:ショーン・グラント
監督:ケイト・ショートランド
原作:『Berlin Syndrome 』メラニー・ジョーステン
配給:レスペ
(c)2016 Berlin Syndrome Holdings Pty Ltd, Screen Australia
公式サイト:berlin-syndrome.com