『アナと雪の女王/家族の思い出』はなぜ盛り上がりに欠けた? 長編第2作への期待

『アナと雪の女王/家族の思い出』はなぜ盛り上がりに欠けた? 長編第2作への期待

 「Let It Go」は、1929年生まれの詩人・新川和江の代表作『わたしを束ねないで』という詩を想起させる部分がある。その一節を紹介したい。

わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください
わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風

 娘、妻、母。女性は一生のうちに、社会の中でこのような役割を絶えず与えられ、縛られることになる。多くの国で男女同権が法によって保証されているが、実際には、人生における様々な場面で、「女であること」に縛られ、様々な制限に悩まされることが多いのが実情だ。「Let It Go」は、そんな女性たちに「その役割から解放されよう」という、カタルシスを与えてくれる。学校という組織に管理され、絶えずストレスを抱えている学生が、「学校を燃やせ!」とか、「バイク盗んで走り出す」みたいな歌詞に感動するというのにも近い。実際にはやれないけれど、その歌詞を聴いている瞬間は救われるのである。

 こう考えると、“アナ雪旋風”が、とくに日本で吹き荒れたという事実にも納得できる。 世界経済フォーラムが発表した、男女平等が達成されていることを比較する、2017年版「ジェンダー・ギャップ(男女差)指数」では、日本は調査対象となった144の国のうち、114位という、不名誉な結果となった。このように女性が社会的に差別されているような国で、「レリゴー」が流行らないわけがないのだ。

 その思想を受け継いで、『アナと雪の女王/家族の思い出』では、「伝統に縛られず、自分たちが新しい文化を作っていこう」というポジティブなメッセージが発せられる。だが、やはり「レリゴー」ほどの、全てを投げ捨てていく爆発力には遠く及ばないのは確かだ。

 しかし、もちろん『アナ雪』シリーズはこれで終わりではない。本当の勝負は、「2019年公開」と発表されている、製作中の長編『アナの雪の女王』第2作である。

 この第2作には、かなり興味深いトピックがある。一部ファンの間で、エルサに同性のパートナーを望む声が多く寄せられたことはご存じだろうか。「Let It Go」には「同性愛者であることを隠さない決意をする」という解釈ができるとして、次作でぜひそのことについて描写をしてほしいというムーブメントが起こったのだ。そのアイディアについて、監督と脚本を務めたジェニファー・リーが『ハフィントンポスト』のインタビューで反応し、そのアイディアに好意的な意見を述べたのだ。

 もし、第2作がそのような内容になれば、ディズニー始まって以来の、同性愛者の主人公が生まれることになる。『アナの雪の女王』という人気ブランド、しかも子どもの観客が多数鑑賞することになるタイトルで、もしそれが達成されれば、そのインパクトはとてつもなく大きなものとなり、大きな議論も生まれるだろう。ビジネスとしての役割も大きく担わされている『アナの雪の女王』シリーズにおいて、それが可能であるとは、現時点では思いにくいが、もしもその領域に足を踏み込むならば、次作は最も革新的な映画の一つとなるだろう。

 ともあれ、第2作では間違いなく「女性の自由意志と解放」に代わる、新たな強いテーマが必要となるはずだ。願わくば、前作以上のインパクトを持った、新たな「レリゴー」が生まれることを期待している。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『リメンバー・ミー』同時上映『アナと雪の女王/家族の思い出』
全国公開中
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney. All Rights Reserved.
公式サイト:disney.jp/Remember-me

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