『サンリオ男子』シリアスな展開に涙! マイノリティーのコンプレックス と不寛容な社会を描く
「今期のアニメは当たりが多い」という声を各所で耳にする。『ポプテピピック』『宇宙よりも遠い場所』『ダーリン・イン・ザ・フランキス』……。だが、筆者のまわりではなかなか『サンリオ男子』の名前が挙がってこない。乙女系メディアミックスプロジェクトということで、おそらく男性アニメファンにはノーチェックの人が多いのだろう。しかし、この『サンリオ男子』、想像以上にシリアスな展開で、思わず涙してしまうほど引き込まれるストーリーなのだ。
イケメンとサンリオキャラがパステルカラーで描かれた本作のビジュアルは、かわいらしくメルヘンな空気感をまとっている。ストーリーもイメージのままに、ほんわか系かと思いきや、毎話各メインキャラのコンプレックスやトラウマが描き出されるというまさかの展開。しかも、そうした表現がとにかくリアリティーたっぷりで驚かされる。
「サンリオ好き」といえば、女子のイメージが強い。そのため、「サンリオキャラクターが好きな男子高校生」という設定には、正直なところ当初少し違和感を抱かざるをえなかった。しかし、蓋をあけてみると、本作の登場人物たちも、筆者のような価値観を抱く人々に囲まれて生きている。作中、サンリオ好き男子たちには、しばしば周囲から「キモい」「男らしくない」といった声が浴びせられる。
主人公・長谷川康太も、幼い頃はポムポムプリンが好きだったものの、他の男子たちに「そんなのが好きだなんて女みたいだ」とからかわれたことがきっかけで、サンリオ好きを隠すようになっていった。また、サンリオ好きを公言しているモテ男子・水野祐に対しても、女子たちは「イケメンなのにサンリオ好きなのが玉に瑕」といった素振りを見せる。このように、『サンリオ男子』と銘打っていながら、彼らへの風当たりの強さを描いている点がとても現実的で興味深い。
多様性が認められつつあるとはいえ、それでもまだ「男は男らしく、女は女らしく」といった価値観が横行している社会。何かしらのマイノリティーであったとしても、周りに合わせて右へ倣えをしていた方が圧倒的に生きやすいだろう。だが、祐はそんな中でも、「好きなものを好きって言って何が悪いの?」「何かを好きだっていう気持ちは全然恥ずかしいことじゃない」と、堂々と胸を張る。康太はそんな祐と接するうちに段々と自信を持つようになり、サンリオ好きであることを友人たちにカミングアウトするに至った。