向井理演じる星名に幸あれ! 『きみが心に棲みついた』最終回に込めれられたテーマとは?

 成長の通過儀礼は、いつだって切ない。ときには心が押しつぶされそうな思いで、親と子の領域を線引きする。「ただ、助けにきたんです」というキョドコに対して、少し微笑んで「うぜぇなぁ」と呟いた星名の言葉は、吉崎の「誰でも大切な人にはうざくなるもんでしょ」と連動して聞こえる。星名はキョドコを大切に思いながらも、個と個であるという認識ができたのではないだろうか。キョドコに母親像を、吉崎に父親像を投影させた星名にとって、ふたりの結婚式が親離れのイニシエーションとなり、いつか彼が誰かに恋する日がきてほしいと願うばかりだ。

 このドラマが描きたかったテーマは、劇中で披露されたスズキ次郎(ムロツヨシ)のスピーチに収束していたように思う。“普通”から外れた“変だ”と言われる人の普通の人生。わかろうとする、わからなくても味方でいてくれる。それが“無理!”、“ない!”というひとことで切り捨てられてきた人間にとって、どれだけの救いになるか……というものだった。街に紛れ込んだ星名のように、表面的にはなかなか理解されにくい“こっち側“の人間は思っている以上にたくさんいるのかもしれない。そんな想像力の種を蒔いてくれた意欲作だったのではないだろうか。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
TBS火曜ドラマ『きみが心に棲みついた』
出演:吉岡里帆、桐谷健太、石橋杏奈、ムロツヨシ、鈴木紗理奈、瀬戸朝香、向井理
原作:天堂きりん「きみが心に棲みついた」「きみが心に棲みついたS」(祥伝社フィールコミックス)
脚本:吉澤智子、徳尾浩司
プロデューサー:佐藤敦司(ドリマックス・テレビジョン)
演出:福田亮介(ドリマックス・テレビジョン)
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/kimisumi/

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