高橋一生は“サポート役”で活きる俳優だ 『民衆の敵』藤堂役で見せる“情”

 本作の、自分の前をあぶなっかしく走る女性市長の佐藤智子をあるときはたしなめ、あるときはサポートするという役割は、高橋一生に期待されるある種の型のひとつではないだろうか。既婚の市長と副市長に指名された藤堂とは、徐々に相棒のような関係になりつつある。藤堂はときおり智子を見て「おもしろい人ですね、ほんと、見てて飽きないです」とあきれて笑う。そんな様子は、ラブコメの定番のワンシーンのようにも見えるが、そこに恋愛関係のようでいてそれとも違う何らかの情があるのが見える。男女のバディということなのだろうか。

 後半の藤堂は、莉子との関係性も変化していく。出会ったころは、趣味がカメラと思しき藤堂が莉子の写真を撮ろうとしたところ、お店の規約で写真はダメと拒否していた莉子が、5話では、「写真を撮って」と自らリクエストする。それは、藤堂と金銭の絡まない関係性になりたいということを意味するのだが、この関係性の変化もせつなく描かれていた。このドラマの高橋一生は、二人の女性に対して、二つの別の形の情を見せているのだ。

 次第にそれぞれのキャラクターが深まり、また市議会を裏で牛耳る犬崎という大きな壁が立ちはだかって、あの天真爛漫だった智子が、そのピュアな発想だけではままならず、「権力」や「政治」についてさらに真剣に考える段階に来ている。そしてそんな智子に対して冷静に助言する藤堂。現実の政治とも重なると思わせる部分があるだけに、智子や藤堂がどんな選択をし、どんな結果を得るのかが最後まで見逃せない。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』
フジテレビ系にて毎週月曜21時~放送
出演:篠原涼子、高橋一生、古田新太、前田敦子、千葉雄大、斎藤司(トレンディエンジェル)、若旦那、細田善彦、今田美桜 、余貴美子、大澄賢也、田中圭、石田ゆり子
脚本:黒沢久子
音楽:井筒昭雄
主題歌:AAA「LIFE」(avex trax)
プロデュース:草ヶ谷大輔
演出:金井紘、石井祐介、相沢秀幸
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/minshuunoteki/

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