『刑事ゆがみ』の根底にあるのは『火サス』? 浅野忠信×神木隆之介バディの絶妙さ

 なんなら、物語をぐいぐい進めていくのは神木が主で、背後でいつもヘラヘラしたり、勝手にフラフラとどこかの扉を開いていたりするのが浅野忠信だ。このバランスは原作と大きく異なるが、それが成立するのは、役者2人の力、そして彼らが持っているパブリックイメージや、素材本来の魅力を、役柄にのっけっているからだろう。近年のドラマ作りの主流になっている、「売れっ子バイプレーヤーをてんこ盛りにする」という保険的な手法を用いていないのも、シンプルで実に見やすく、好感が持てる。

 ともあれ、このドラマを観ると、「原作に忠実」であることが、実写化のベストな回答ではないことをしみじみ感じる。これは古くは『きらきらひかる』や『カバチタレ!』でも見られたケースだ。そうした意味で、原作の縛りがきつくなく、映像としての可能性や解釈の拡大を許容できる懐の深さ、成熟度を持つ“青年漫画”原作には、まだまだ質の高いドラマの素材が眠っているかもしれない。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
木曜劇場『刑事ゆがみ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:浅野忠信、神木隆之介、山本美月、仁科貴、橋本淳、稲森いずみほか
原作:井浦秀夫「刑事ゆがみ」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載中)
脚本:倉光泰子、大北はるか、藤井清美
プロデュース:藤野良太、高田雄貴
演出:西谷弘、加藤裕将、宮木正悟
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/yugami/

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