満島ひかりと小泉今日子、涙のぶつかり合い 『監獄のお姫さま』第8話の名演技を読む

 そして、ふたりで食事をする最後の夜。ノートを取り出した先生は、馬場カヨに再び諭す。その口調は、懲罰房のそれとは違ってやさしく、言葉を丁寧に選んでいるように見える。「アンタがイヤなヤツじゃないってことは、馬場カヨがいいヤツだってことは、これ読んですごいわかった」先生の話し方は、否定を否定して肯定する独特な言い回しだ。「馬場カヨのことはね……うん、キライじゃない。だからね、これは渡せない。先生としてじゃなくて、母親として渡せない。わかって」

 じっと見つめ合うふたり。「……ごめん」そうつぶやくと涙を浮かべて手を合わせる先生。それが愛情があっての行動だとわかる馬場カヨも、静かに目を伏せて手を合わせる。「いただきます」涙がこぼれ落ちるのをぬぐいながら白米を口に運ぶ。ここでもドラマ『カルテット』で満島ひかりが涙を流しながら食事をしたシーンを彷彿とさせる。「泣きながらご飯食べたことがある人は、生きていけます」というセリフが浮かび、ふたりが別々の道で生きていく決心をしたことを伺わせる。“好きだから、もう会わない“と。

 静かな食卓に流れてくるのは、松尾和子の「再会」。この歌のタイトル通り、後にふたりは再会し、復讐計画を実行する。もしかしたら先生は、馬場カヨたちの負け戦を勝ち戦にしてみせるために参加したのかもしれない。吾郎(伊勢谷友介)の妻・晴海(乙葉)をアジトに召喚したことにより、狂言誘拐にできるのではないか。吾郎が語る真相次第では、この誘拐事件の起訴そのものが取り下げられる可能性も……。

 だが、まだまだ先は読めない。次週予告では、姫が「先生、やっぱり私、犯人です」という衝撃的な発言も。いよいよ次回、最終章の前編“プレ裁判“が開廷される。気づけば、もう12月。ああ、終わってほしくない。一流女優たちの名演技も、個性派俳優たちの迷演技も、もっと見ていたい。

(文=佐藤結衣)

■番組情報
火曜ドラマ『監獄のお姫さま』
TBS系にて毎週火曜22時〜
脚本:宮藤官九郎
プロデューサー:金子文紀、宮崎真佐子
演出:金子文紀ほか
出演:小泉今日子、満島ひかり、伊勢谷友介、夏帆、塚本高史、猫背椿、池田成志、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂
主題歌:安室奈美恵「Showtime」
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/pripri-TBS/

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