息の長いシリーズになる可能性も!? 探偵モノ×バディ・ムービー『探偵はBARにいる3』の魅力

希望残された『探偵はBARにいる3』の魅力

 1980年代になると、『48時間』(82)や『リーサル・ウェポン』(87)などの刑事アクションが<バディ・ムービー>の主流となってゆく。そして、1990年代には、人種や性別の問題が<バディ・ムービー>に取り入れられ、黒人と白人のコンビである『メン・イン・ブラック』(97)や、東洋人と黒人のコンビである『ラッシュアワー』(98)、或いは、フェニミズムを含んだ『テルマ&ルイーズ』(91)などが生まれてゆく。男性と女性のコンビである『X-FILE』(映画版は98年)には、『名探偵ホームズ』シリーズ的な要素があることを指摘できるが、やがて2000年代になるとガイ・リッチー監督による『シャーロック・ホームズ』(09)のように、前述の<探偵モノ>を<バディ・ムービー>に取り込んでゆくという変化を見せるようになったのである。

 つまり『探偵はBARにいる』は、<探偵モノ>でありながら<バディ・ムービー>でもあるという、時代の潮流や変化によって生まれた作品のひとつであるといって過言ではないのだ。それは、このシリーズが現在の邦画において最強だという由縁でもある。本来<探偵モノ>は、ほろ苦い終幕を迎えることが常であった。そこには<運命の女>=<ファム・ファタール>と呼ばれるヒロインが物語に介在し、悲劇的な結末を導くからでもあった。『探偵はBARにいる』シリーズでは、1作目の小雪、2作目の尾野真千子に続いて、3作目では北川景子がヒロインを演じている。今回のヒロインが前2作と異なるのは、探偵と接点を持っているという点にある。<フィルム・ノワール>における<運命の女>というよりも、『男はつらいよ』シリーズにおけるマドンナの存在に近いヒロイン像なのだ。このことは、シリーズ継続のヒントに成り得るように思える。それは、大泉洋の演じる“探偵”が「毎回マドンナからの依頼を解決するも、結局は結ばれない」というひな形を踏襲することで、息の長いシリーズになる可能性を秘めているからだ。

 そこで重要となるのが、相棒である松田龍平の存在。二人のオトボケぶりによって<バディ・ムービー>の軽妙さを生み、悲しいだけでは終わらせない<探偵モノ>にもなっているのだ。都市の片隅を舞台にした『探偵はBARにいる』は、様々な事情を抱えた人々の依頼を題材にしながら「不幸は社会の底辺に溜まる」とも描いている。前2作が悲劇的に事件を解決させた<フィルム・ノワール>のような趣があったとすれば、本作には“希望”が残されている。「自分の大事なもののため、誰もが必死で生きている」というモノローグに心動かされるのは、過酷な時代の波を生き抜く人間の諦めない姿を『探偵はBARにいる』という映画が、人情味たっぷりに描いているからにほかならない。

※『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)より

■松崎健夫(まつざき・たけお)
映画評論家。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門の執筆業に転向。『キネマ旬報』(キネマ旬報社)、『ELLE』(ハースト婦人画報社)、『SFマガジン』(早川書房)などに寄稿。『WOWOWぷらすと』(WOWOW)、『ZIP!』(日本テレビ)、『japanぐる〜ヴ』(BS朝日)、『シネマのミカタ』(ニコニコ生放送)などに出演中。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)ほか。

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■公開情報
『探偵はBARにいる3』
12月1日(金)全国ロードショー
出演:大泉洋、松田龍平、北川景子、前田敦子、鈴木砂羽、リリー・フランキー、
田口トモロヲ 志尊淳、マギー、安藤玉恵、正名僕蔵、篠井英介、松重豊、
野間口徹、坂田聡、土平ドンペイ、斎藤歩、前原滉、桝田徳寿、天山広吉、片桐竜次
原作:東直己「ススキノ探偵」シリーズ
監督:吉田照幸
脚本:古沢良太
音楽:池頼広
(c)2017「探偵はBARにいる3」製作委員会
公式サイト:http://www.tantei-bar.com/

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