今期ドラマのトレンドは“男を懲らしめる”? 『奥様は、取り扱い注意』から『監獄のお姫さま』まで
10月よりスタートしたドラマが着々と話数を重ね、いよいよ中盤に差し掛かってきた。この辺で「面白い」か「面白くないのか」、はっきりと分かれてくる時期でもあるが、視聴者の反応がダイレクトに数字に出る作品もあれば、低迷している作品も見受けられる。今期のドラマのトレンドについて、無類のドラマフリークである麦倉正樹氏に聞いた。
「女性主人公が多いというのはここ数年変わらない傾向ですが、10月スタートのドラマは“悪い男を懲らしめる”という内容が多いなと感じます。『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(フジテレビ系)、『監獄のお姫さま』(TBS系)、『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)……『コウノドリ』(TBS系)の主人公は綾野剛さん演じる産婦人科医ですが、実質的な主人公は毎回登場する妊婦さんたちと言っても過言ではないでしょう。『民衆の敵』では女性だからと軽視している年配の男性議員を、『監獄のお姫さま』は婚約者を冤罪に陥れたとされている板橋五郎(伊勢谷友介)を、『奥様は、取り扱い注意』では伊佐山菜美(綾瀬はるか)が身勝手な男たちを毎週のように成敗している。『コウノドリ』も、ナオト・インティライミさんが演じた夫役に象徴されるように、出産前後の女性の気持ちに無頓着な男性全般が、それとなく非難されがちだったりします。まあ、ある意味、当然のことだと思いますが……。ことほど左様に、女性が男性を懲らしめる物語は、間違いなく今期のトレンドと言えるでしょう」
一方、高視聴率が話題となっている『ドクターX~外科医・大門未知子~』は、上記のドラマと同じく、女性主人公が「男たちを懲らしめる」という側面がありつつも、これまでのシリーズ作品とはまた違った流れも見られるという。
「『ドクターX』も当初は、凄腕の女医が周囲の男たちにナメられながらも、神懸かり的な手術の巧さでのし上がっていく姿を描いたドラマでした。ですが、今期の『ドクターX』を見ていると、大門未知子(米倉涼子)が誰かと対決している印象があまりないのです。大学病院を牛耳る男性医師たちも、既に彼女の手術の腕は十分に認めているので、彼らとの対立というよりはむしろ、森本光(田中圭)、西山直之(永山絢斗)、伊東亮治(野村周平)など、後輩である男性外科医たちを、結果的には“導く”ようなエピソードが多いように思えるのです。もちろん、最終的には蛭間重勝(西田敏行)院長の背後にいる「日本医師倶楽部」会長・内神田景信(草刈正雄)との直接対決が待っているのかもしれませんが、恐らくそれは“女性対男性”という構図の戦いにはならない気がします。当初は“男懲らしめ系”で始まったこのドラマですが、ほかの作品との差別化を計るうえで、今シーズンは何か新しい領域にチャレンジしている印象があるのです」
そんな中、麦倉氏は特に『監獄のお姫さま』に注目しているという。
「『奥様は、取り扱い注意』のように、視聴者が見ていて“旦那のここがムカつくよね!”という部分を回し蹴りなどで、毎回、ボコボコにやっつけるといった直接的な方法で懲らしめる作品に対し、『監獄のお姫さま』は、女たち5人が非常にアクロバティックなやり方で、“ずるい男”を象徴する五郎たちをどうにかしようとする中で、男女の違いの本質を明らかにすると同時に、女たちの多様な価値観や過去も浮き彫りにしていくような流れがあり、そこが面白いと思っています。最終的に、単に男性と女性の分断を描くのではない、それが和解なのか連帯なのかわかりませんが、いずれにせよ何か考えさせられる結末に導いてくれるのではと注目しています」
とはいえ、麦倉氏もひとりの男性。「今期はどのドラマを観ても、男たちが懲らしめられているばかりなので、正直見ていて胸が痛むときがあります……」と、最後に小声でその心情を吐露していた。
(文=大和田茉椰)
■番組情報
火曜ドラマ『監獄のお姫さま』
TBS系にて毎週火曜22時〜
脚本:宮藤官九郎
プロデューサー:金子文紀、宮崎真佐子
演出:金子文紀ほか
出演:小泉今日子、満島ひかり、伊勢谷友介、夏帆、塚本高史、猫背椿、池田成志、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂
主題歌:安室奈美恵「Showtime」
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/pripri-TBS/