BOMI「えいがのじかん」第10回

BOMIの『スイス・アーミー・マン』評:自由な発想で作られた、ファンタスティックな映画

 作品を観る前は「ふざけて作ったB級映画かな…下手したらC級?」なんて思っていたのですが(タイトルも地味だし)、とにかく話がありもしない方向にどんどん進んでいくので、この映画のラストなんて全く予想がつかないものになっています。

 しかも死体役を演じているのが、あの『ハリー・ポッター』シリーズの主人公ダニエル・ラドクリフですよ。正直言って、よくこの役を引き受けたなと思いました。でも、よくよく考えてみると、『ハリー・ポッター』シリーズが終わってから、彼はちょっと変わった役ばかりやっているんですよね。演技の幅が広くて役者としても本当にすごいなと思いますが、やっぱりそういう変わった役に挑戦したいという気持ちが強いんでしょうか。それとも迷走中なんでしょうか。スイス・アーミー・ナイフのごとく、彼の演じる死体が、死後硬直を生かしてカッターになったり銃になったりシャワーになったりするところで、この映画のタイトルの意味がやっとわかりました。彼はそういうことを楽しみながらノリノリで撮影に臨んでいたんでしょうね。もう、思い切りがいいこといいこと。

 コメディでありながら、青春映画でもあるし、恋愛映画の要素もあるし、ファンタジーでもあるし、人間ドラマでもある。常識では考えられないことがバンバン展開されていきますが、そこに「なぜ?」と疑問を投げかけるのではなく、素直に受け入れていくことで、面白さや楽しさ、美しさの理解につながっていく作品だと思いました。B級かもって二の足踏んでるあなた、新しいものが観たいあなた、に是非お勧めの映画です。いろんなことがバカらしくなって、肩の力が抜けるかもしれません。オナラなのに……(笑)爽快でした。

■BOMI(ボーミ)
シンガー。2012年6月に日本コロムビアよりミニアルバム『キーゼルバッファ』でメジャーデビュー。2015年にセカンド・アルバム『BORN IN THE U.S.A.』を発表。そして昨年12月にはTOKYO RECORDINGSプロデュースによる最新アルバム『A_B』をリリースした。モデルや女優としても活躍中。公式サイトTwitterFacebook

■公開情報
『スイス・アーミー・マン』
TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
監督・脚本:ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン(ダニエルズ)
出演:ダニエル・ラドクリフ、ポール・ダノ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド
提供:ポニーキャニオン/カルチュア・パブリッシャーズ
配給:ポニーキャニオン
2016年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/97分/G指定
(c)2016 Ironworks Productions, LLC.
公式サイト:sam-movie.jp

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