有村架純の朝ドラヒロイン像はなぜ新しい? 『ひよっこ』が“なんでもない”女の子を描く意味

 ただ、みね子はこうした視聴者の疑問にそろそろ答えを出そうとしている。時子、早苗、由香、みね子の4人がバー月時計に集まったとき、由香から「いろいろつらいことあっても耐えてさ、我慢して我儘いわないで、一生懸命働いて、つらいこと自分の中にため込んで、けなげで、でもにこにこしててさ、自己主張しないっていうか、なんていうか、そういうの嫌なのよ、もう嫌だ、もう無理だって投げ出してほしいのよ私は」と言われるシーンがある。

 それに対してみね子は、「時代とか自由ってわかんない」「自由ってなんですか、好き勝手生きることですか」「自由って自分で選ぶってことでしょ」「自分で選んだんです。それは自由とは違うんですか」と答える。

 これも、ともすれば抑圧ととられるかもしれないが、根底にはみね子の、人の何かを犠牲にしたり、無理してまで、自分の幸せを追求したくはないということがあるのではないか。人を犠牲にすれば、自分の心にも何かしらのモヤモヤが残って、ちゃんと幸せに過ごせないという気持ちの表れなのではないかと思えるのだ。

 第22週では、それでもかなり変化が見られた。出前で訪れたテレビ局では、父親が記憶喪失の間にともに過ごしていた女優の世津子(菅野美穂)と再会。そこで思いをはっきりと伝えると、みね子は世津子から「こんなにはっきりものを言うこだったっけ?」と言われるのだ。

 私自身からすると、今までも、みね子が何も物言わぬヒロインには見えなかった。物語というものは、強烈な人や強い女性を描くほうが、はっきりと面白いものになりやすい(と思われてきた)。この『ひよっこ』の中でも、みね子と島谷の恋を描いた坪内と新田の漫画に対して、編集者から「中だるみしている」と指摘されたというエピソードがある。それを聞いたみね子が「人の人生に中だるみってなんですか!」と怒るのだ。これは、物語の派手さのために無理に事件を起こしたりキャラクターを動かすものではないという思いが込められているように思う。

 強くてエネルギーに満ちてキラキラしていて、自分のことだけを見ていればよいという環境に恵まれた女性の姿だけが、正しい女性のロールモデルであるとだけ描かれることにもモヤモヤが残る。それは、理想であって、現実ではない。みね子のように、地に足をつけて、目の前にある仕事をして、自分で人間関係を築いていくことだって重要なのだ。

 派手な出来事はなくても、模索しながら生きている人を描くということがこの作品の当初の目的だ。一方で、自分の意志を持ち強く生きようともがいている女性のことも否定はしていない(というか、誰のことも否定していない)。第22週では、みね子は少しずつ自分を出していく。それは、当時の女性たちを解放した「ツイッギーのミニスカート旋風」とともに描かれるのだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』
出演:有村架純、沢村一樹、木村佳乃、羽田美智子、佐久間由衣、泉澤祐希、峯田和伸、津田寛治、宮原和、高橋來、佐々木蔵之介、古谷一行、宮本信子、磯村勇斗ほか
作:岡田惠和
音楽:宮川彬良
平成29年4月3日(月)~平成29年9月30日(土)全156回(予定)
<総合>
(月~土)午前8時~8時15分/午後0時45分~1時[再]
<BSプレミアム>
(月~土)午前7時30分~7時45分/午後11時~11時15分[再]
(土)  午前9時30分~11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「ひよっこ一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時~11時20分
「5分で『ひよっこ』」
<総合>
(土)午後2時50分~2時55分     
(日)午前5時45分~5時50分/午後5時55分~6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/hiyokko/

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