古典的SFの文脈に『第9地区』的なアフリカ要素 異色の反乱劇『リヴォルト』の魅力

異色の反乱劇『リヴォルト』の魅力

アフリカならではの臨場感を織り交ぜた、異色の反乱劇

 かつて『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督は自作について「これは政治的な映画ではない、あくまで娯楽作だ」と語ったが、そうやって娯楽映画を目指しながらも『第9地区』にはかつてのアパルトヘイト政策、あるいは現代における南アフリカ国民とナイジェリア移民とのリアルな関係性などが自ずとせり出してくるところにスリリングさがあった。

 その点、『リヴォルト』の新鋭ジョー・ミアーレもまた、本作を純然たる娯楽作として描きつつも、その舞台としてのアフリカが自ずと醸し出す底知れぬ響きやパワフルな鼓動を信じる者だということが伝わってくる。それゆえ「何者かの侵略」とそれに対する「revolt=反乱」といった構図は、アフリカ大陸の抱える歴史や政情とも絡まり合い、内戦、あるいは他部族や民族同士の対立といった記憶さえもうっすらと内包しながら興味深い筆致を展開させていく。

 かくも農村部、褐色に覆われた大地、廃墟となった建造物、スラム、そしてビル群に囲まれた都市部と様々なアフリカの風景を借りて「この地球に何が起こっているのか?」「奴らの目的は何なのか?」「名前のない俺は一体何者なのか?」といった究極の命題を解き明かしていく本作。そのストーリーラインは実際のところH.G.ウェルズの「宇宙戦争」を緩やかなベースにしているのは明らかで、つまるところスピルバーグの『宇宙戦争』はもちろん、『インディペンデンス・デイ』や『世界侵略:ロサンゼルス決戦』、さらには『マーズ・アタック』などのプロットとも共通する部分が多い。

 だがそれにしても、やはりここにアフリカという要素を組み合わせるだけで従来とは全く異質のビジュアルと生々しさが生まれるのは本作が与えてくれる格別の驚きと言えるだろう。そして主演のリー・ペイスといえば、最近だと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の残忍なローナン役で知られる存在感のある俳優。当初は『ガーディアンズ~』の主人公ピーター・クイル役でオーディションを受けたというから結果的に180度違う役柄を得たことになるが、そんなペイスが併せ持った従来の「精悍さ」と「謎めいた魅力」が本作でも唯一無二の推進力となってこの絶望的な物語に光を与えつづけていることも特筆せねばなるまい。

 さて、いろいろと述べてきたが、このたび『リヴォルト』は奇しくも欧米に先んじて世界最速での日本公開が決まった。まさにこの戦略においても従来のオーソドックスな流れから逸脱した、巧妙なズラしが展開されているというわけだ。局地的な映画が局地的に投下されるというこの現象を楽しみつつ、アフリカの大地におけるSFサバイバルを堪能してみてほしい。そして、まだ世界的に誰も「評価付け」していないこの作品に、ジョー・ミアーレという俊英のビジョンに、ぜひ貴方なりの評価を下してみて頂きたい。

『リヴォルト』予告編

■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。

■公開情報
『リヴォルト』
7月1日(土)より ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
出演:リー・ペイス、ベレニス・マーロウ、エイミー・ルイーズ・ウィルソン、ケネス・フォク
監督:ジョー・ミアーレ
脚本:ローワン・アトリー、ジョー・ミアーレ
撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
編集:ヴァンサン・タベロン、エヴァン・シフ
音楽:ベアー・マクレアリー
配給:クロックワークス&アルバトロス・フィルム
2017年/南アフリカ・イギリス/英語/カラー/シネマスコープ/デジタル上映/ドルビーSRD/88分/字幕翻訳:仙野陽子/原題:REVOLT
(c)POW NEVADA, LLC 2017
公式サイト:http://revolt-movie.com/

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