飯豊まりえ×平祐奈が語る『暗黒女子』の裏側 飯豊「清水富美加ちゃんはスペシャルな存在だった」

飯豊「精神的にすごくきつかったです。まさに“暗黒期”でした」

ーー今回、飯豊さん、平さんともに自分自身とはかけ離れた役柄で苦戦したとのことですが、普段の役作りとの違いはありましたか?

飯豊:私は、基本的には台本にあまり書き込まないんです。疑問に思う部分があったら、線を引いて“?”や、“これいるかな?”などの一言を添える程度なんですが、今回は真っ黒になるくらい書き込みました。普段はまず台本を一通り覚えてから現場に入り、その場で生まれたものを大事にしていたのですが、今回はあらかじめ考えてから現場入りしないとダメでしたね。たとえば、予告編にも使われている「い・や・だ!」といういつみのセリフ。あのたった3文字をいかに憎たらしく言えるかっていうのが鍵だったので、事前に色々と考えていました。直前までのセリフを柔らかめに発して、ここで一気に豹変すると言った感じに強弱を意識しましたね。あの3文字を強調するために、1シーン全体を計算する。そんなやり方をこの作品では常にしていました。あらかじめ一つひとつのシーンをしっかりと噛み砕き、自分の中に落とし込んでから撮影に挑まないと、監督から「OK」が出ないんですよ。そんな難しい役柄だったので、私にとっては新たな挑戦でした。

白石いつみ(=飯豊まりえ)

ーーでは、役作りにあたり何か参考にされた作品は?

飯豊:『Wの悲劇』です。普通のお芝居ではなく、舞台のようなお芝居をしてくれと監督から言われていたので。最後に文学サークルの後輩4人に向かって叫ぶシーンがあるのですが、そのシーンが最も舞台らしさが出ています。いつみちゃんがどっぷり自分の世界に入り込んでしまっていて、「さようなら~」のシーンではもう完全に気が狂ってますよね。

平:私は普段の自分を出せるシーンも多かったので、そういう意味ではやりやすかったです。美礼ちゃんは、最初は内気でおとなしい子なのですが、文学サロンに徐々に慣れていくと明るくなり、みんなの妹キャラというポジションでした。私も6人兄弟の末っ子で、性格は明るい方です。監督も「美礼が文学サロンに慣れていくシーンに入ったら、普段のキャラを出してていいよ。あなた妹キャラ得意でしょ?」っておっしゃっていたので、自然体で演じることができました。でも、最初の方のシーン、たとえば校門に入るシーンは、苦戦しましたね。まだ、美礼ちゃんが自分に自信がなく、おどおどしていた頃なので。自信のなさを表現するには、どうしても猫背でなくてはならなかったんです。私は、バレエを習っていたので、胸を張ってしまうと言いますか、無意識のうちに姿勢を正しているんですよ。だから、監督から「それだと自信あるよ! 美礼もっと自信なさげでいいから、もっと力抜いて。飯豊まりえっぽくしてくれる?」というアドバイスをいただきました(笑)。

飯豊:え、初めて聞いた(笑)。確かに私、猫背で自信ないんで。

平:ずっと言えなかった! 今だから言えることです(笑)。撮影中のまりえちゃんが、本当にもう精神的にきつそうで……。不安そうにしていたので。

飯豊:精神的にすごくきつかったです。まさに“暗黒期”でした。特殊な役なので、撮影に入る前はすごく楽しみにしていたんですが、いざやってみると想像していたものとは全く違って……。何回リハを重ねても、監督が満足そうな顔を見せることはなくて、これはヤバいかもと思って自分でも映像を確認したら、やはり白石いつみという人物とはほど遠かったんです。そんなできない自分に落ち込んでしまい、さらに自信がなくなっていきましたね。どちらかというと褒められて伸びるタイプなんですよ、私(笑)。ですが、今回はダメ出しが多かったのと、みんなの足を引っ張ってはいけないという思いで、日に日に追い込まれていきました。愛のムチと言いますか、監督から愛のある厳しいお言葉をたくさん頂いて育っていきました。

 

(取材・文=戸塚安友奈 写真=泉夏音)

■公開情報
『暗黒女子』
全国公開中
出演:清水富美加、飯豊まりえ、清野菜名、玉城ティナ、小島梨里杏、平祐奈、升毅、千葉雄大
原作:秋吉理香子『暗黒女子』(双葉文庫)
監督:耶雲哉治
脚本:岡田麿里
制作プロダクション:ROBOT
配給:東映/ショウゲート
(c)2017「暗黒女子」製作委員会 (c)秋吉理香子/双葉社
公式サイト:ankoku-movie.jp

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