『孤独のグルメ』『SRサイタマノラッパー』……春の深夜ドラマはカルト的人気作が目白押し?

今シーズンも寝不足の毎日が続くこと間違いなし!

 一風変わったドラマでは、MBS/TBSの深夜ドラマ『ファイナルファンタジーⅩⅣ 光のお父さん』。タイトルだけだと『勇者ヨシヒコ』のようなドラマを想像するが、FF14のオンラインゲームを通じて父親と息子が交流していくという、現実世界とゲームの世界が交差していく物語だ。原作は、マイディー氏のブログ「一撃確殺SS日記」にて連載されていた『光のお父さん』というタイトル一連の日記。シリーズ30周年を迎えるファイナルファンタジーシリーズでは、(父と息子がゲームをやっている姿だが)初の実写ドラマ化として話題となっている。主人公の息子を千葉雄大、父親を大杉蓮演じるほか、女優にモデルにグラビアにと活躍している馬場ふみかが出演。台本に目を通し主題歌を作ったGLAYの新曲「the other end of the globe」やSILENT SIRENのエンディング曲にも注目だ。なお千葉雄大は、ほかに今期の深夜ドラマ『兄に愛されすぎて困ってます』(日本テレビ系)にも出演している。

 そして放送前から何かと世間を騒がしているのが、テレビ朝日日曜深夜に放送される渡辺麻友主演の『(タイトル未定)』。秋元康原作のこの物語は、渡辺麻友が婚活で出会った男たちと交際する中で、その男たちの正体を見抜き、相手の下腹部を切断し成敗していくという、阿部定事件をモチーフにした危険すぎるドラマだ。とは言ってもコメディである。昨年放送されたAKB48グループ出演のドラマ『AKBラブナイト 恋工場』(テレビ朝日系)の演技バトルで渡辺麻友が1位を獲得し主演が決定。ドラマのタイトルを「サヨナラ、きりたんぽ」と発表したところ、苦情が寄せられタイトル変更を余儀なくされたのだ。『AKBラブナイト 恋工場』での渡辺麻友の意気込みが「悪役やちょっと変わった役にも挑戦したいです!」と宣言しての1位獲得で、最近では裏の顔もちょいちょい覗かせていただけに、秋元康が大きく勝負に出た感じを受ける。

 そんなスキャンダラスな部分が目立つドラマだが、注目すべきポイントはほかにあり、それは近年の邦画の中でも名作と言われる映画『桐島、部活やめるってよ』や『ディストラクション・ベイビーズ』などの脚本を手がけた喜安浩平が脚本を担当していること。また監督の佐藤太は『マジすか学園シリーズ』や、渡辺麻友主演ドラマ『さばドル』でメガホンを取っていただけに期待せざる終えない。

 ほかにも日本テレビ系木曜深夜の「木曜ドラマ」枠で放送される、恋愛下手な女子たちによる本音トークを交えた藤原晶の漫画を基に、高梨臨主演で実写化した大人向け恋愛コメディ『恋がヘタでも生きてます』や、バカリズムが原作・脚本・主演を務める『架空OL日記』、俳優集団D-BOYSのメンバーである堀井新太、山田裕貴、三津谷亮のゆとり世代の男3人組による子育て奮闘記であるTBS『テッペン!水ドラ!3人のパパ』など、今シーズンも個性豊かなコメディドラマが数多く放送される。

 かつて若手俳優や若手作家の登竜門的な実験の場であった深夜ドラマ。もちろんその役目は継続しつつも、今やプライムタイムに引けをとらない俳優たちが次々と登場し、低予算ながら作家や出演者たちが作りたいドラマを作る場となっている。ネット配信やDVD売り上げを目的として作られていることもあり、目の肥えたドラマ好きを満足させるために、よりピンポイントで作品の質を求めた結果が、今の深夜ドラマの面白さにつながっている印象だ。今シーズンも寝不足の毎日が続くこと間違いなし!

(文=本 手)

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