川口春奈は少年漫画ヒロイン向き? 『一週間フレンズ。』の“絶対的美少女”感

 映画が始まってすぐの時点で、主人公はヒロインに一瞬で恋に落ちるというのに、その恋が一切前に進まずに、一週間経てばリセットされてしまう。出会いの場面での悪印象と、ライバルの出現から、主人公に思いを寄せる幼馴染と、正反対の性格だけど理解してくれる親友の存在。まさに典型的な青春ラブストーリーが始まるお膳立てができているのに、そうはならない。

 それだけ、「友人との記憶が一週間でリセットされる」という設定が強く物語に左右しすぎていて、10年近く前に日本映画界で大ブームとなった難病モノのラブストーリーとはまた違うアプローチで、この歯がゆい物語を演出する。しかも、途中から登場するライバルのイケメン青年のことを、ヒロインが忘れないのは「友人」ではなくそれ以上の立場に置いているからだと気付いてしまうと、もう居たたまれなくなってしまう。

 それでも、これが少女漫画原作の映画ではなく、『月刊ガンガンJOKER』に連載されていた毅然とした少年漫画だったことを思い出すと、この進展しない恋模様にも合点が行く。これが少女漫画であれば、ライバルからヒロインを奪い取ることに成功して、“恋愛成就”という帰結点に向かって進んでいくのだろうが、少年漫画である以上、どの雑誌で連載していようが「努力・友情・勝利」が根本に見え隠れする。

 山崎賢人演じる主人公は、ヒロインのために空回りしながらも積極的に奔走していく「努力」をしつつ、うまく恋心を扱いきれずに「友情」から入る。そして、一度は途絶えてしまうその「友情」の再開こそが「勝利」としての位置付けだろう。その結末の先に訪れるであろうラブストーリーに期待してしまうのは少女漫画的な考え方で、あくまでも少年漫画的な見せ方に留める。なんとも憎たらしい演出だろう。

 これまで少女漫画の実写化で、王子様として数多の恋模様を演じ切ってきた山崎が、なんの変哲もない主人公を演じられるというのは、見ていてとても安心ができる。むしろ、バラエティ番組などで見せる彼の朗らかな表情からは、屈託のない笑顔は実に似合うし、こういうキャラクターの方が相応しいのではないかとさえ思えるのだ。

 一方でヒロインの川口春奈は、ここ数年で急激に女優としての魅力を増した印象があるが、本作ではさらに磨きがかかり、画面に映るだけで映画が輝く。川口といえば、もともとはファッション雑誌『ニコラ』でデビューし、リハウスガールからポカリスエットのCMを経て、高校サッカーの応援マネージャーに就任するなど、いわゆる若手美少女女優の登竜門をコンプリートしてきた逸材だ。

 その“絶対的美少女女優”としての地位にいながらも、なかなか大きな当たり役に恵まれずにいた彼女は、2013年の秋に放送された、ゴールデンタイム枠での初主演ドラマ『夫のカノジョ』(TBS系)が歴史的な低視聴率を記録してしまう。普通ならばそこで低迷期に入ってしまいかねないところを、逆に踏み台にして、チャンスに変えたとみて間違いないだろう。翌年からの出演作、とくに『金田一少年の事件簿N』(日本テレビ系)で4代目・七瀬美雪を演じた彼女の姿は、プレッシャーから解放されたように伸び伸びとしていた。同じ役をその1年半前に演じたときと比べれば、表情の柔らかさが格段に違うのだ。

 今回の『一週間フレンズ。』で彼女が演じた藤宮香織という役柄を見ると、ちょうどその時期に公開された主演映画『好きっていいなよ。』での主人公・橘めいを思い出す。どちらも過去に起きた友人とのトラブルがきっかけで心を閉ざし、独りで過ごしていた彼女に、イケメン男子が近付いてきて、徐々に心を開いていくという共通点がある。今回は「友達になってください」という山崎賢人に対して「ムリ」の2文字を浴びせ続けるが、出会いの場面で回し蹴りを食らわせて「死ね」と罵るよりかは充分優しくなったものだ。

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