『君の名は。』は映画市場をどう変えたか? GEM Partners梅津氏が読む、2016年の興行データ

『君の名は。』は映画市場をどう変えたか? GEM Partners梅津氏が読む、2016年の興行データ

2017年の映画業界はどうなる?

ーー改めて2016年の全体の状況を見ると、前年比入場者数が8%ぐらい増加して、興行収入も比例して増えている。邦画が興行収入の63.1%を占めている状況ですが、映画市場は活況だったと捉えて良いでしょうか?

梅津:もし『君の名は。』がなかったとしても、映画市場が活況だと言われた2015年から横ばいで、好調だったと言えると思います。『君の名は。』は大きなボーナスではあったけれど、それ以外にもヒット作がたくさんありました。ここ数年の男女・年齢別の映画鑑賞者数の推移を見ると、14年と16年は若年層の比率がぐっと上がっています。14年は『アナと雪の女王』が、16年は『君の名は。』が大ヒットしました。興行収入数百億規模のヒット作がでると、映画市場は構造自体が大きく変わるんです。2001年に『千と千尋の神隠し』が308億のヒットとなり、2001年末には『ハリー・ポッターと賢者の石』が出てきました。2010年の『アバター』は156億のヒットとなったとともに映画鑑賞体験の定義自体を変えたインパクトがあったと思います。おそらく昨年の『君の名は。』などの効果で、2017年も好調が続くのではないかと。過去20年くらいのデータを見ると、全体としてシニアが増えて、若者が減って、結果として2000億円くらいの市場としてあまり変わらず推移していたのですが、昨年は若者がぐっと増えて2350億円規模にまで成長したので、これはポジティブに捉えて良いでしょう。また人口としては大きいシニア層も増えてきていますが、まだまだ掘り起こす余地がありそうです。ユーザーそれぞれが観るべき映画とちゃんと出会えるきっかけと、劇場まで足を運べる動線を整備していくことで、さらに良い循環が生まれれば良いですね。

ーー洋画の興行収入が前年比で89.8%になっているのは、どう見ていますか。

梅津:ビジネスのやり方の比較という意味で、洋画と邦画を分けるのは意味のある見方だと思います。邦画の多くは日本の制作会社が日本市場をターゲットにして制作した作品で、ローカル制作のコンテンツです。一方で洋画は、海外で制作されたもので、輸入ビジネスといえます。ビジネス構造論としては、対比することで見えてくるものはあるでしょう。ただ、単純な数字だけを比較して、洋画に対するネガティブなイメージを持つ必要はないのかなと。邦画にだって苦しかった作品はたくさんありましたし、逆に洋画で目覚ましいヒットとなった作品もたくさんありましたから。『ズートピア』や『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』もそうですし、先ほどの『デッドプール』や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』も若者の観客を大きく掘り起こしました。アベンジャーズシリーズとして市場を作り上げていった結果でしょう。洋画は今後も強い作品が続々と控えていて、『スター・ウォーズ』シリーズはこれから毎年公開されますし、今年は『パイレーツ・オブ・カリビアン5/最後の海賊』もあります。2016年にアニメが大ヒットしたのは、世の中の“空気”も影響していたと言いましたが、洋画に関してもポジティブに捉えて、新作の公開を楽しみに待ちたいところです。

ーー全体として、映画業界には追い風が吹いている?

梅津:映画鑑賞は継続性のある消費行動です。映画鑑賞行動への参加率のようなマクロな数値から試算すると、全体として良いシミュレーション値が出ています。昨年、数字が大きく動いたことは繋げていくべき大切な資産だと思います。映画に対するポジティブなイメージをもって前向きな気持ちで映画を観る人が増えてくれたら良いですね。

(取材・構成=編集部)

■梅津 文(GEM Partners株式会社代表取締役/CEO)
1997年、東京大学法学部卒業後、警察庁入庁。都道府県警研修修了後、国際犯罪、中央省庁再編に係る予算・組織・法令などの企画業務に携わる。2000年にニューヨーク大学ロースクールにてLL.M.(法学修士)取得。2002年にマッキンゼーに入社。通信・メディア業界研究グループにおいてマネージャーとして新規事業、マーケティング、組織・オペレーション変革プロジェクト推進に携わる。2008年にGEM Partners株式会社を設立・代表取締役就任。

GEM Partners株式会社:https://www.gempartners.com/

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■GEM Partners株式会社、初出資作品
『スウィート17モンスター』
4月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか公開
出演:ヘイリー・スタインフェルド、ウディ・ハレルソン、キーラ・セジウィックほか
監督・脚本:ケリー・フレモン・クレイグ
製作:ジェームズ・L・ブルックス、リチャード・サカイ、ジュリー・アンセル
2016/アメリカ/カラー/104分/PG12
(c)MMXVI STX Productions, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:www.sweet17monster.com

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