「おそ松」声優・櫻井孝宏、デビュー20年にして人気衰えぬワケ 陰のある声の魅力に迫る

 先日、前作から8年を経て続編の決定が発表された『コードギアス 反逆のルルーシュ』。櫻井が演じた枢木スザクは、一見とても善良な人となりなのだが、主人公・ルルーシュと対立していく中で、狂気に満ちた表情を見せるようになっていく。また、映画化もされた『PSYCHO-PASS サイコパス』で演じたのは、史上最悪の犯罪者、槙島聖護だ。この槙島というキャラクターは、頭脳明晰な反面、どこか無邪気な子どもらしさも持っていて、悪役でありながらも熱狂的なファンが多かった。

 今期出演作を見ても、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の岸辺露伴は、個性派が集まる「ジョジョ」シリーズの中でもとりわけアクが強く、ファン人気も高いキャラクターだ。『響け!ユーフォニアム2』の滝 昇も、とっつきにくい性格から、ストーリー序盤では憎まれ役として描かれていたが、吹奏楽部の顧問としての確かな腕前や情熱が明らかになる過程で、次第に生徒たちと心を通わせ合うようになっていく。

 こうしたクセありキャラたちは、決して人気キャラクターランキングで1位になるようなタイプではないだろう。しかし、意外なギャップがあることで人間性に深みが増したり、視聴者が “陰” の部分を自己と重ね合わせて感情移入しやすいことなどが、一定数のファンの心に深く突き刺さる要因となっているのだ。

 イケボ声優が多数台頭している中、未だ櫻井の人気が衰えないのは、正当派キャラクターに限らず、こうした個性派を見事に演じ切っている点にあるのではないだろうか。芸歴20年を迎えてもなお、ベテランの立ち位置に安住せず、仕事やファンに対して謙虚に向かい合っている点も、好感度が高い。今後の活動については、「(声優として、純粋に芝居以外にも)もっと何か強みがほしい」(参考:「ボイスニュータイプNo.061」櫻井孝宏インタビュー)と、貪欲に語る櫻井。きっと、過去作を超えるような、個性的なハマり役が出てくることに期待できるだろう。

■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。
Twitter:https://twitter.com/manyotaso

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