「おそ松」声優・櫻井孝宏、デビュー20年にして人気衰えぬワケ 陰のある声の魅力に迫る

 アニメファンの間で一大ムーブメントとなった『おそ松さん』で、長男・おそ松を演じたことなどが記憶に新しい、人気声優の櫻井孝宏。巧みな演技力はもちろん、大人の色気を感じさせる「イケボ」と整ったルックスから、女性ファンからの支持も根強い。今年で声優業20周年を迎える櫻井だが、2016年秋期アニメだけでも10作品以上に出演しているなど、まだまだ飛ぶ鳥を落とす勢いは止まらないようだ。そんな彼の人気の秘訣とは、一体どこにあるのだろうか。

 代々木アニメーション学院を卒業後、96年に『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』で声優デビューを果たした櫻井。しかし、そこから数年は鳴かず飛ばずの状態で、声優をやめようと考えた時期もあったのだという。転機となったのは、それから3年後の99年。『デジモンアドベンチャー』のテントモン役で初めてのレギュラーを獲得してから、徐々に活躍の場を広げていくこととなった。本人も雑誌インタビューで「お芝居というものが何となくわかってきたのが30歳を過ぎてから」(参考:「ボイスニュータイプNo.061」櫻井孝宏インタビュー)と語るように、声優としては、どちらかといえば遅咲きタイプだったと言えるだろう。

 演技以外の面に目を向けると、イベントやラジオなどでは、トークの切り返しのうまさから、まわりの声優たちに「世界一のレシーバー」と呼ばれている櫻井。3年前からパーソナリティを務める自身のラジオ番組「P.S.元気です。孝宏」でも、リスナーから投稿された相談メールに真摯に答えるなど、ファン思いな姿が好評を博している。

 このように、話し上手で周囲への気遣いにも長けていることから、一見すると社交的な性格に思える櫻井。しかし、子どもの頃は地味で引っ込み思案だったことや、ラジオなどで見せる顔は「『本来の人格』ではなく『仕事でできた人格』」と語るなど、意外に “陰” を感じさせるようなコメントも多く残している。また、「どうもスマホに興味を持てない」と、現在でもガラケーを使っていたり、レコードの収集癖があるなど、我が道を行く一面も持っているようだ。

 これまで数多くの作品に出演し、様々なキャラクターを演じてきた櫻井だが、中でも特に得意とするのは「何か問題がある人。弱い人。イメージしにくい役」なのだという。確かに、過去作を振り返ってみると、正統派イケメンキャラに限らず、櫻井同様 “陰” や “意外性” を持った役どころが目立つように感じられる。そして、こうした陰のあるキャラクターほど、一部の視聴者に対して強い訴求力を持っているのではないだろうか。

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