『この世界の片隅に』のんインタビュー

のんが語る、“この世界の片隅に”見つけた新たな道 「かっこ悪いことって時々、必要なんです」

「かっこ悪いことをしても、またかっこ良くなれる」

 

 のんびりとした性格のすずが、北條家で慣れない家事に苦労しながらも、周囲の人々との間に温かな関係性を築きながら生きていくーーこう書くと朗らかなホームドラマにも思えるが、彼女を待つ運命は残酷だ。1945年8月6日に向けて、無情に時は刻まれていく。のんは、物語を通して変わっていくすずの、内面的な声にも耳を傾けたという。

「北條家に嫁いでいくときのすずさんは、奥さんとしての務めを果たさなければいけないって、一生懸命に頑張っているんだけれど、街で迷子になってしまって地面に絵を描いているときは、ちょっと子どもの頃の彼女に戻ってしまっていたり。その時々の心情を解釈しながら演じていました。戦災で辛い目に遭ってしまってからは、悲しい気持ちや申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけれど、同時に“納得がいかない”っていう気持ちも強くあって、なにをしていても居心地が悪い感じ。なぜこんなにも辛い状況がまかり通るのか? って、ずっと問いかけているんです。表面的にすごく落ち込んでいながら、やり場のない怒りも抱えている。ラストは、お母さんになりました」

 のんが女優として再出発するにあたっても、大きな意味を持つ作品となりそうな『この世界の片隅に』。今後、彼女はどんなことを表現していきたいのだろうか。

「“かっこ悪くてもいい”っていうことですかね。自分をかっこ悪いなって思うと、恥ずかしい気持ちになってしまうけれど、かっこ悪いことって時々、必要なんですよね。かっこ悪いことをしちゃったとしても、またかっこ良くなることはできるってことを表現できたら素敵だと思います。それと、ずっと言っていることなんですけれど、女の子のパワーを表現していきたいです。すずさんみたいな子どもの心を持った女性の、天真爛漫な“女の子パワー炸裂!!!!”みたいなところを、もっと表現していきたいですね」

 

(取材・文=松田広宣/撮影=向山裕太)

■公開情報
『この世界の片隅に』
11月12日(土)テアトル新宿、ユーロスペースほか全国ロードショー
出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、澁谷天外
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト:konosekai.jp

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