『デアデビル』制作陣が明かす、Netflixドラマが描くヒーロー像「デアデビルは身近な場所を救うためにいる」

 マーベルヒーローの作品群の中で、Netflixオリジナルドラマ『デアデビル』は極めて異色の作品だ。主人公のデアデビルことマシュー・マードック(通称:マット)は盲目の弁護士で、それゆえに“レーダーセンス”と呼ばれる超人的な聴覚や嗅覚、反射神経などを持つものの、空を飛んだり、手からビームを放ったりといった超自然的な能力はない。あくまでひとりの人間として、ヘルズキッチンというひとつの街で犯罪者相手に戦う自警ヒーローだ。悪との戦いはスタントを使わない肉弾戦になり、だからこそ生々しい迫力に満ちている。マットが抱える悩みも、一個人としての正義を問うもので、決して人々の日常から乖離したものではない。製作総指揮を務めるジェフ・ローブによると、彼の人間味こそが、ドラマというスタイルで作品化することの意義であるという。

「もしアベンジャーズが世界を救うためにいるとしたら、デアデビルは身近な場所を救うためにここにいるんだ。多くの意味で、それが人々が没頭できるストーリーなんだよ。映画はエピック・アドベンチャーで、ローラーコースターだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の中で宇宙の彼方に連れて行ってくれたり、『アントマン』でミクロの世界に行ったりという風にね。僕らは映画よりもテレビでやった方が優れているストーリーを語っているんだ。それに、(テレビの方が)エモーショナルなインパクトを与えてくれる」

Netflixイベントにて、『デアデビル』キャストと制作陣

 1シーズン13話というNetflixドラマの構成も、テレビドラマ独自の魅力を際立たせている。Netflixドラマは、通常のテレビドラマと違い、オンエア前に全話を完成させ、一気に13時間分のエピソードを提供するスタイル。映画と比べ、物語を語る上での時間的優位はもちろんだが、配信のスタイルについても、他のブロードキャスト作品に比べて大きなアドバンテージがあると言える。それはジェフも実感しているようで、「一週間に一度ストーリーを語る方法だと、来週も人々が戻ってくるようにするのが目的になってしまうこともあるんだ。それに対して、Netflixで物語を語る場合は、最初から最後まで滑らかなストーリーにすることできる。鑑賞者も見始めたら、13時間後にはそのストーリーを完結させることが出来るってわけ。それはストーリーテリングにおけるダイナミクスを変化させるんだ」とコメントしている。

 長い尺があるからこそ、スーパーヒーロー作品の醍醐味であるアクションシーンだけではなく、人間ドラマもしっかりと描き切ることができる。シーズン1では、マットの内面の葛藤を主軸に描き、シーズン2ではスーパーヒーローのあるべき姿や善悪の境界を問う、より高度な問題が用意されている。主演のチャーリー・コックスはマットの心の葛藤について次のように語る。

チャーリー・コックス

「マットが自分自身に抱くコンスタントな葛藤は、1シーズンでかなり掘り下げている。彼の行いや自警主義の正義に従事することへの疑問、それに彼の信念からくる葛藤についてね。それはシーズン2でもずっと目にするものだよ。フランク・キャッスルが出てくることで、それは少し影に隠れるけど。フランクはデアデビルに、違う種類のジレンマをもたらすんだ。シーズン1とは違う種類のアイデンティティ・クライシスを与える」

 フランク・キャッスル(ジョン・バーンサル)は、別名パニッシャーと言い、シーズン2に登場するヴィラン(悪役)である。ヴィランといっても、彼は彼なりの正義を掲げ、デアデビルとは対照的な手段で街に根付いている悪を殲滅していく。アンチヒーロー、といったイメージに近いだろう。ジョン・バーンサルは二人の関係について「マットとフランクは両方とも正義のためにそこにいるが、彼らの正義の種類は明らかに違う。それを達成する手段も異なっているし、最終的にお互いが望むものも違う。そんな二つの力がぶつかった時にとても面白いドラマが生まれるんだ」と語っている。不殺を貫くマットと、悪人には死を与えるフランク。正義感を持つ者同士であるにも関わらず、相容れないふたりの関係が、本作のテーマをより複雑なものにし、さらに味わい深いドラマを生み出していくのだ。

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