高橋一生、菅田将暉らが『民王SP』で“演技合戦“ どんなカオスな世界を見せるか?
暑苦しいほどの熱血漢で強面な総理大臣と、女子力高めで人情味溢れるおバカな息子が入れ替わる池井戸潤原作の大人気ドラマ『民王』(テレビ朝日)が、本日4月15日に『民王スペシャル~新たなる陰謀~』として帰ってくる。
2015年の夏ドラマとして放送されるや否や、その面白さが話題を呼び、オリコングループが創設したドラマアワード「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」にて、作品賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞の4冠に輝くなど、一般視聴者だけに留まらず、マスコミ業界人にも大好評だった『民王』。政治という重厚なテーマを秀逸なエンタメドラマとして成立させた制作スタッフの手腕はもちろんだが、何より芸達者な俳優たちの可愛さと面白さが爆発的ヒットに一役買ったのは間違いない。
主役の総理である武藤泰山役の遠藤憲一とその息子である武藤翔役の菅田将暉が入れ替わるこのドラマ。今まで入れ替えものの作品の多くは、演技力が未知数な若手を売り出すためにベテラン俳優の演技力でカバーし盛り上げて行くパターンが多かったが、『民王』はベテランの新しい一面と若手の堂々とした巧みな演技という、2人の絶妙なパワーバランスによる相乗効果で面白さが増している。
まず、遠藤憲一がとても可愛いのである。前クールの『お義父さんとよばせて』(カンテレ・フジ系)でコミカルな演技が話題を呼んだが、今まで強面の悪役のイメージから、コミカルな演技も面白い俳優であると、視聴者の意識を変えた作品が『民王』だろう。あの強面にも関わらず、常にビクビクしていて、膝を抱えては落ち込み、パンツ一枚で殴られメソメソ泣き、飴を嬉しそうに舐める。以前に放送されていたアプリゲーム「キャンディーソーダ」のCMの妖精役でその片鱗を見せてはいたが、あの顔で可愛いと思わせる女子力の高い演技は、父親と女子高生の心が入れ替わるドラマ『パパとムスメの7日間』の館ひろしを思い出させる。無知だが真摯な姿勢で人情味のあるスピーチを行ったり、囲み取材を受ける時の脱力しきった佇まいなど、遠藤が純粋な心を持つ大人を巧みな演技で体現しているからこそ、視聴者は違和感なく物語の中に入っていける。
そして菅田将暉。彼の予想以上に堂々とした演技がこのドラマをさらに面白くしている。もともと演技には定評があり、若手の中でも1、2を争う演技派として認知されている。『仮面ライダーW』出身の菅田が19歳の時に出演した映画『共喰い』では、暴力的な性癖を持つ父親と同じ血が流れていることを怖れる17歳の高校生役を演じた。バイオレンスシーンや性描写にも果敢に挑み、若手ながら骨太な演技を印象付けた。2014年の『海月姫』では女装家で政治家の息子役を演じ、男の子なのに出演者の中で一番可愛い存在、だけど行動は男らしいという捻りのある役を演じていた。陰惨な『共喰い』とは真逆で、同一人物とは思えないほどのカメレオンぶりだった。それぞれ主役級の役であったにも関わらず、イメージに囚われない役作りを行ったことで、菅田を実力派と認識したファンも多かったのではないか。今回のドラマでは、熱血漢の総理大臣である父親と入れ替わるだけに、可愛い顔をして就職面接での啖呵を切る姿は勢いと迫力があり、普通の若手俳優には出せない堂々とした風格がある。これ以降、バラエティ番組にも多く出演するようになったが、トークもまた冴えていて、感心するばかりである。
しかし、このドラマで本当に人気があるのは、総理の第一秘書役である貝原役の高橋一生だ。暑苦しい2人の間に入る貝原は常にクールで、大事なことも、ボケやツッコミもいっさいトーンを変えずに絶妙な間で無表情にやりとりする存在で、これがまた実に可愛く、とくに女性たちから多大な支持を受けている。この役で一気に注目を集めた高橋だが、デビューは10歳というベテラン俳優。印象深いのは『池袋ウエストゲートパーク』(TBS)の、引きこもりで後に情報屋になる森永和範役や、『軍師官兵衛』(NHK)でのクールな二番家老の井上九郎右衛門役、記憶に新しいところでは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)の嫌味な引越し屋の先輩役などだろう。2004年の映画『茶の味』の囲碁部部長や『スウィングガールズ』の吹奏楽部長のような、かなり地味なキャラクターも、彼が演じると実に味わい深い。まさに名バイプレイヤーと呼ぶにふさわしい存在だ。