『オデッセイ』VRは、ハリウッドの新市場を開拓するか? 最新技術による「擬似宇宙体験」を検証

 最初のVR体験は、体験者自身が空から火星に降り立つもの。地面がどんどん近づいてきたかと思うと、地面に半分埋もれているワトニーの目の前まで一気に着地する。すると、死んでいたかに見えたワトニーがいきなり動き始め、まさに目の前でワトニーが立ち上がる瞬間を味わうことができるのだ。

 ワトニーが火星で自給自足の生活をするためにジャガイモを栽培するシークエンスでは、体験者自身がワトニーになり、ジャガイモを鍋に放り投げたり、計量器の上にものを乗せたりと、コントローラーを両手で操りながら、体験者の意志に従った行動ができることを実感できるという。

『オデッセイ』VR映像

 後半では、ワトニーが火星から脱出するために試みる一連の体験が、VRとして用意されている。目の前にあるレバーを両手で操作しながら、クレーンを使って何枚ものソーラーパネルをトラックの荷台に乗せる作業では、「ストームが近づいているから気をつけろ」という警告が聞こえ、横を振り向くと、実際にストームが近づいてくるのを確認できる。体験者はストームが来る前になんとか作業を終えなくてはならず、リアルな緊張感を体感できるのだ。

 ローバーに乗って操縦桿を操作しながら脱出用のロケットへと向かう任務では、山のように大きな岩が並ぶロケットまでの道のりを、コックピット内にあるGPSの地図と目視で回避しながら進まなければならず、それなりの技術も必要とされる。

 そしていよいよ脱出ロケットに乗り込むことに。体験者はロケットのコックピットにすでに座っているという状況で、発射寸前に「ロケットが重すぎる。目の前にあるグリーンのボタンを押せ」という指示が届く。指示どおりにボタンを押すと、ロケットのパーツがいくつか外れ、ロケットが発射される。ここでは、椅子から伝わる発射時の振動も大きく、非常にリアルな、迫力のある体験ができるという。

『オデッセイ』VR映像

 宇宙空間に入ると、突然無重力状態になり、コックピットの中の道具が宙に浮き始める。そして、「目の前に浮かんでいるネジ回しを掴んで、片方のグローブを刺せ。そのグローブから漏れる空気圧で移動しながら、頭上に見える宇宙船を目指せ」といった内容の指示が飛ぶ。映画と同じようにグローブに穴を開け、コックピットから飛び出すと、穴の開いたグローブの向きを調整しながら、目の前に見える宇宙船に向かって進んでいくことになる。

 宇宙船に近づくと、メリッサ・ルイス宇宙飛行士(ヘルメットで顔は見えないが、声は映画同様ジェシカ・チャステイン)の姿と声を確認することができる。無事、彼女のもとに届くと、「家に帰りましょう」という言葉とともに抱擁を交わすことになる。

『オデッセイ』(c)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 実際にこの『オデッセイ』VRを体験した現地ライターによると、体験後は額にうっすら汗をかくほどで、我を忘れてその世界に没頭してしまったといい、「『オデッセイ』のVRを没頭感で評価すると、今までに体験したVR体験で最高と言っていいだろう」とコメントしている。

 ストロムバーグが立ち上げたVRコンテンツの制作会社The Virtual Reality Companyのアドバイザーに、スティーヴン・スピルバーグらが名前を連ねていることからも、ハリウッド映画界がVR市場に大きな可能性を感じていることがわかる。20世紀フォックスは、この“The Martian VR Experience”が新たなVRエンターテイメントビジネスのスタートと見ており、今年中に映画を基にしたVRプロジェクト第2弾を発表する予定だ。今後、ハリウッドでVR市場がより盛んになっていくことは間違いないだろう。

(文=編集部)

■公開情報
『オデッセイ』
公開中
配給:20世紀フォックス映画
(c)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/odyssey/

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