『信長協奏曲』はどう映画化された? 小栗旬らの実力と、テレビ版からの変化を読む
テレビドラマが映画化された作品の中でも、『真夏の方程式』や『テラスハウス クロージングドア』などは、テレビと映画の見せ方や観客の見方の違いを意識して作られ、傑作と呼べる仕上がりになっていた。また、『踊る大捜査線』や『アンフェア』などは、テレビでは実現できなかったような大スケールの物語に切り替えられ、映画版の醍醐味が味わえた。
一方、今回の『信長協奏曲』の場合は、ドラマの延長線上というより、ドラマ内で完結させずに最終回の位置付けとして、映画化を選択したといえよう。先述した作品に比べると、映画化のメリットを活かしきれていない印象も否めないが、主演の小栗旬、そして羽柴秀吉を演じる山田孝之ら、キャストの好演に助けられて、125分という比較的長めの尺を退屈に過ごすようなことはない。このようなタイプだと、『SP THE MOTION PICTURE 野望篇/革命篇』のように、興行的にも内容的にも成功している例がある。元々映画のような作りを意識して作られていたドラマであったとはいえ、同作を契機にV6の岡田准一がアクション俳優としてのポジションを確立し、映画俳優としての確固たる地位を築いたことは大きい。
今回の映画化は、小栗旬ら役者陣の実力を見せる作品としては十分に機能しているし、ドラマを観続けてきた視聴者に「最終回を映画館で観る」というイベントを提供するという点でも意義はあっただろう。せっかく大ヒットを狙えるだけの知名度を持つ安全圏のコンテンツなのだから、もう少し映画ならではの魅力を味わいたかったところだが、あくまでテレビドラマの最終回として楽しむのが、本作の鑑賞の仕方としてはベストなのかもしれない。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。
■作品情報
『信長協奏曲』
公開中
出演:小栗旬、柴咲コウ、向井理、藤ヶ谷太輔、水原希子、濱田岳、古田新太、高嶋政宏、山田孝之
原作:石井あゆみ「信長協奏曲」
脚本:西田征史、岡田道尚、宇山佳佑
監督:松山博昭
音楽:☆Taku Takahashi(m-flo)
主題歌:Mr.Children「足音 ~Be Strong」
公式サイト:nobunaga-concerto-movie.com