人はなぜ『HiGH&LOW』を語ると“熱く”なってしまうのか? AKIRA曰く「和製マッドマックス」への期待

月刊誌「小説すばる 2026年10月号」(集英社)で、「行くぞテメェら!『HiGH&LOW』10周年祭り」という大特集が組まれた。
『HiGH&LOW』(以下『ハイロー』)とは、拮抗した力を持つ5つのチームが台頭するSWORD地区を舞台にした物語を、ドラマ、映画、舞台、ライブ、コミック、ゲームといった多岐にわたるジャンルで展開した総合エンターテインメントプロジェクトだ。
本作が始まった時は、全員主役といえる破格の群像劇とバックボーンとなる設定の過剰な情報量に圧倒されたが、何より衝撃だったのは、EXILE HIRO率いるLDH JAPANという芸能プロダクションが仕掛けるビッグプロジェクトとして始まったことだ。
漫画では『ONE PIECE』(集英社)や『HUNTER×HUNTER』(同)、アニメでは『機動戦士ガンダム』シリーズなど、壮大な世界観を背景に無数の登場人物が織りなす群像劇は多数存在する。
対して『ハイロー』の独自性は、AKIRA、岩田剛典、町田啓太といった実在する俳優と『ハイロー』のキャラクターの世界がシンクロするプロジェクトとして展開されてきたことにあり、フィクションであると同時に、生身の俳優たちのドキュメンタリーであったとも言える。
そんな『ハイロー』の全貌は、本誌のコラム「祭りに備えろ! 『HiGH&LOW』入門ガイド」(文・樹島千草)にまとまっている。このコラムを読むだけでも『ハイロー』のスケールの大きさが実感できるのではないかと思う。
そして、本誌ならではの特集内容となっているのが、AKIRA(EXILE/EXILE THE SECOND)×川村壱馬(THE RAMPAGE)×平沼紀久(脚本・監督・演出家)による鼎談「ふたつのフェーズ、『新世界』へ」、『ハイロー』の世界を舞台にした5人の作家による読み切り短編、そして『ハイロー』への熱い思いが書かれた5人の作家によるエッセイだ。
鼎談では『ハイロー』のこれまでの歴史を3人が振り返っている。平沼監督は、かつてHIROさんと「十年続いたら、この作品は本物になるよね」と話したことに触れ、「気が付いたら十年経っていた」というのが率直な感想だと語っている。プロジェクトの中心にいたAKIRAは、当時はハリウッド映画のような大作を求めてオーディションを受けていたそうだが、撮影初日にセットに入った時に「自分の夢、かなったな」と思うくらい『ハイロー』の現場はスケール感があり、誇らしかったと回顧している。
一方、川村壱馬が『ハイロー』に参加したのは『HiGH&LOW THE WORST』からだが、プロジェクトが始まる前から『ハイロー』については知っており、当初から「絶対出たい!」と思っていたそうだ。そして最初のテレビドラマ『HiGH&LOW~THE STORY OF S.W.O.R.D.~』(日本テレビ系)のシーズン1の頃から『ハイロー』を追っていたそうで、出演者であると同時に大ファンであることが伝わってくる。川村はAKIRAたちEXILE TRIBEの先輩たちを「雲の上の人、憧れのお兄さまがた」という感覚で見ていたそうだが、その距離感はそのまま、彼が演じた鬼邪高の下級生・花岡楓士雄の立ち位置と重なっており、『ハイロー』のドキュメンタリー性を改めて感じた。
また、『ハイロー』は漫画家や作家といったクリエイターにも大人気だが、その理由について平沼監督は「余白」が刺さってくれたのではないかと指摘している。
これは本誌特集で掲載された読み切り短編を読むと納得する。この特集では、青崎有吾、葉真中顕、円居挽、三浦しをん、吉川トリコの5人が『ハイロー』のキャラクターを主人公にした短編を書いている。特集の目次に「※いずれもオリジナル作品であり、公式のストーリーではありません。」とあるように、作家独自の解釈で書かれた二次創作だが、台詞回しやキャラクター描写の実在感が見事で、各小説家の『ハイロー』愛が伝わってくる。
中でも強い感銘を受けたのが、吉川トリコによる「苺美瑠狂はベクデルテストをパスする」である。この短編では苺美瑠狂というツッパリ娘のチームの女たちに焦点を当てているのだが、映画やドラマといったフィクションにおけるジェンダー表現の偏りを調べるベクデルテストについて、押上、ノノリキ、イシカワが話す場面が、そのまま『ハイロー』における女性キャラクターの描写に対する鋭い批評となっている。今後の『ハイロー』における女性描写を考える上でも貴重な短編だと言えるだろう。
一方、朱野帰子、芹沢央、阿津川辰海、織森きょうや、降田天ら5人の作家が書いたエッセイは、好きなキャラクターや『ハイロー』との出会いについて語っており、『ハイロー』が好きな気持ちがストレートに伝わってくる。この特集もそうだが、人は『ハイロー』の魅力について語ろうとすると、素直で熱い口調になることを、それぞれのエッセイを読んで思い出した。
そして、鼎談の後半では2027年に劇場公開される新作映画『HiGH&LOW THE新世界』について語られている。映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で主人公のマックスの吹き替えを担当したAKIRAが“和製『マッドマックス』”だと語っているだけでも期待が膨らむのだが、これまで名前だけが登場していたバルジもついに姿を現すという。
世界情勢が混迷を極めるカオスな時代に、新しい『ハイロー』はどのような新世界を見せてくれるのか? 来年の公開が楽しみである。
■書誌情報
『小説すばる 2026年10月号』
価格:1,100円(税込)
発売日:2026年9月16日
出版社:集英社






















