『機動戦士ガンダムSEED』なぜ賛否両論から大ヒット作に? 新作『ZERO』へ繋がる20年目の正解

20年経っても変わらない『SEED』の凄み

 『機動戦士ガンダムSEED』シリーズの新作映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ZERO』が、来年1月15日に公開されることが発表された。幻に終わったはずの『SEED』の映画が公開され、さらにもう一本作られるとは……。感慨の湧く話である。

新規ファンを爆発的に掘り起こした『SEED』の革新性

 『機動戦士ガンダムSEED』は、2002年から2003年にかけてTBS系列で放送されたガンダムシリーズのTVアニメ作品である。2004年には続編である『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』も放送された。さらに2006年には劇場版の制作が発表されるも、こちらは続報がないまま半ば放置。が、2024年には劇場版として『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されている。今回制作が発表された『ZERO』は、この『FREEDOM』の前日譚に当たる作品になるという。

 2000年代の前半〜中盤に放送された『SEED』シリーズは、ガンダムシリーズ中興の祖とでも言うべき作品である。1999年には『∀ガンダム』が放送され、この作品がこれまでのガンダムシリーズを総括するような内容だったことから、1979年以来連綿と作られてきたガンダムシリーズは一旦ひと段落した。場合によっては、ガンダムシリーズ自体がそのまま消えていく可能性もあったのである。

 が、『SEED』は「21世紀のファーストガンダム」を目指して作られた作品であり、新世代のファンの発掘とシリーズの新たなスタンダードの確立を明確に意識していた。初代『機動戦士ガンダム』からストーリーや劇中の諸要素の引用を行いつつ、平井久司によってデザインされた華のあるキャラクターや、背中に羽根を背負った主役メカのかっこよさは中高生でも理解できるものだった。美少年・美少女が織りなす過酷なドラマに地上波放送ギリギリの残虐描写が盛り込まれ、人気声優も大量投入。おまけに放送後には、上戸彩が出演するガンプラのCMも放送された。これらの工夫によって制作サイドの目論見はガッチリ当たり、若年層・女性層の新規ファンを世界規模で大幅に掘り起こした。冗談抜きで、あの当時の『SEED』はすごかったのである。

 が、この大ヒットは同時にさまざまな摩擦も引き起こした。インターネット白書によれば、2002年のネット人口は4600万人強。世帯普及率が60%を超え、ブロードバンドが広がり始めた時期である。SNSどころかインターネット自体がまだ普及途上にあった頃で、この時期のネット上のコミュニケーションといえば、2ちゃんねるなどの掲示板である。今までガンダムに触れてこなかった新規ファンの大量流入は古参ファンとの摩擦を生み、掲示板では激しい言い争いや悪口が書き込まれる状態となった。長寿コンテンツならではの風景ではあるが、しかし放送当時の『SEED』はかなり賛否が割れる作品だったのも事実である。

怒りも懐かしさへと変えた『FREEDOM』の圧倒的説得力

 それらのドタバタから20年近くを経て公開された『FREEDOM』は、清々しいほどにどこまでも『SEED』だった。美男美女ばかりのキャラクターや、一般モビルスーツとネームドキャラクター搭乗モビルスーツとの圧倒的戦力差、そしてキャラクター同士の痴話喧嘩がそのまま世界の命運に直結してしまうストーリー。妙にスケベなパイロットスーツやコテコテなセリフ回し、そしてT.M.Revolutionの歌声。どこを切っても、完璧なまでに『SEED』だ。学生の頃によく通っていたラーメン屋がまだ営業しているのをたまたま見つけて入ってみたら、昔と全く同じ味のラーメンがドカ盛りで出てきた……。そんな懐かしい驚きがあった映画が、『FREEDOM』だったのである。

 なんせ20年が経っている。当時SEED直撃世代だった人々も、今や立派な大人になっている。そこに向けて放たれた『FREEDOM』というド真ん中のド直球は、見事に突き刺さったことだろう。また『SEED』に対して色々と思うところがあったマニアたちにしても、さすがに20年間ずっと怒っている人は少数派だろうし、なにより『SEED』という作品がガンダムシリーズで果たした「ファン層の拡大とシリーズの継続」という役割については認めざるを得ないはずだ。

 こういった状況の中で、変に捻ったりせず「あのころそのままの味で勝負する」という選択をしたのは、まさに英断と言うべきだろう。時間経過によって往時の摩擦の記憶もノスタルジーへと変化し、「そういえば『SEED』ってこうだったよなあ」と素直な気持ちで楽しむことができた。これを見越してかどうかはわからないが、20年を経ても『SEED』であることから逃げなかったことが、『FREEDOM』の一番すごいところだと思う。

 今回発表された『ZERO』は『FREEDOM』の前日譚とのことなので、またしても期待通りのテイストで勝負をかけてくることはほぼ確定しているように思う。『FREEDOM』から2年の時を経て再び『SEED』らしさを味わえるのか、期待したいところだ。

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