有吉弘行や小島秀夫が『日本三國』を絶賛するワケは? 歴史エッセンスを取り入れた「近未来三国志」としての魅力

 4月に入り、春アニメが続々と幕を開ける中、ひときわ注目を集めている作品が『日本三國』だ。

 松木いっかによる原作は、小学館のコミックアプリ「マンガワン」にて連載中。アニメ化以前から、有吉弘行は「面白すぎて新刊が出るたびに一巻から読んでる」と綴り、かまいたち・山内健司はバラエティ番組「川島・山内のマンガ沼」にて麒麟・川島明へ熱烈にプレゼンするなど、一部のマンガ通から注目を浴びていた。それがアニメ放送されるや、SNSでは「今期の覇権」「凄まじいものを見てしまった」といった絶賛の声が続出。Xではゲームデザイナーの小島秀夫が「凄いアニメだった。びっくり。」と投稿し、大ハマりしているようだ。
 
 物語の舞台は、現代からおよそ1世紀先の日本。核戦争や災害、悪政、民衆の暴動によって文明は明治初期まで退行。国は「大和」「武凰」「聖夷」の三つに分裂し、再び戦国の世を迎えている。大和の辺境で農業を営んでいた主人公・三角青輝(みすみ・あおてる)は、権力者の理不尽な横暴によって新妻を斬殺されるが、感情的に復讐に動くのではなく、妻と誓った「泰平の世」を築くため、辺境将軍・龍門光秀の元に仕官。腐敗した構造を内側から正そうとする青輝の淡々とした表情の内に秘めた熱い志の対比が、読者の心を掴んで離さないのだ。

 本作の特筆すべき点は、その異色すぎる世界観だ。たとえば、登場人物の台詞の中には「草」「尊い」「バリエグい」「とりま」といった現代のネットスラングや若者言葉が多数出てくるが、けっして軽いノリというわけではなく、作中のキャラは自然に使いこなす。そこには、私たちが生きる時代と地続きの「言葉の歴史」が感じられる。こうした令和要素に加え、文明が明治初期まで後退した設定による幕末要素。「お家」という価値観や、「長篠の戦い」といった戦国時代要素。帝と血縁を結ぶことで「平氏」が権勢を振るう平安要素。「空城の計」「連環の計」「雁書の計」といった策謀を用いる「三国志」要素。さらには、日本統一後に「外国」が出てきそうな「進撃の巨人」的要素までが混ざり合っている。

 現代は「日本時代」と呼称され、「ユニバの待ち時間は760分だった」との“伝承”も紹介されるなど、歴史エッセンスをこれでもかと混ぜ合わせながらも決して破綻しない松木いっかの構成力には脱帽するしかない。魅力的な将軍や軍師が多数登場しつつも、「策略」に焦点が当てられ、戦闘描写は最小限に抑えられ結果だけが淡々と語られていくため、歴史の教科書を読み進めているような読み味となっているのも新鮮だ。

 青輝は“後の鬼才軍師”と紹介されているが、今のところは一介の官僚にすぎず、見せ場は限定的。それでもスポットが当てられた時の“弁舌での戦い”は緊張感と爽快感を読者に与えてくれる。作中には“謀略の裏をかいた謀略のそのまた裏に伏せられた謀略がある”といった各勢力による何層もの思惑が張り巡らされ、“策略系作品”が好きな層にはたまらないだろう。

 原作コミック7巻が4月10日に発売されたが、「泰平の世」を築くための青輝の旅路はまだまだ終わりそうにない。アニメ放送で人気が一気に加速しそうだが、果たしてどんな歴史が見られるだろうか。

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