『るなしい』が映し出す、“信者ビジネス”の時代 推し活と恋愛の闘いにどう決着をつける?

 木ドラ24(テレビ東京系木曜24時30分~)で放送されている深夜ドラマ『るなしい』が話数を重ねるごとに面白くなっている。

 本作は神の子として育てられ、恋愛を禁じられた少女が、愛する人を信者ビジネスの世界に陥れていく宗教純愛サスペンスだ。原作は小説現代(講談社)で意思強ナツ子が連載していた同名漫画。ショッキングな内容ゆえにどこまで映像化できるのか不安だったが、原作漫画の不穏さを実写映像に落とし込むことに見事成功しており、令和ならではの暗黒青春ドラマの傑作となっている。 

※以下、ネタバレあり。

 郷田るな(原菜乃華)は、おばば(根岸李衣)が経営する鍼灸院で「火神の子」として「自己実現」を売る信者ビジネスをおこなっていた。鍼灸院では、るなの処女の血が染み込んだモグサを高額で販売していたため、学校では「宗教の人」と呼ばれていじめに遭っていたが、ある日、学校の人気者であるケンショー(窪塚愛流)に助けられ、恋をしてしまう。

 神の子という立場ゆえに、るなは恋愛を禁じられていたが、気持ちを抑えられず衝動的にケンショーに告白する。しかし、「火神の子」としての役割を投げ出そうとする彼女にケンショーは幻滅し、るなはフラれてしまう。

 るなの幼馴染・石川スバル(本島純政)が、彼女の告白は仲間内の罰ゲームだったとフォローしたことで、ケンショーとの関係は修復されたが、るなはケンショーを逆恨みし、信者ビジネスの世界に引きずりこもうと考える。

 原作漫画は学生時代を描いた1~2巻と社会人になったるな達の姿を描いた3~5巻の二部構成となっている。

『るなしい(3)』

 ドラマ版『るなしい』も原作漫画の流れを踏襲しており、現在は高校を舞台に学園ドラマが展開されているのだが、本作を観て衝撃を受けたのは、今の時代ならではの、思春期の少年少女のヒリヒリするような描き方。

 物語冒頭、るなはいじめに遭っており、プールの授業があると誰かにパンツが盗まれ、黒板に貼りつけられる。るなはパンツを自分で取るとその場で履き、その姿を見たクラスメイトはより気持ち悪いと思う。

 そんなるなを、幼馴染で同級生のスバルはかわいそうと思うが、その場で助けると自分もいじめに遭うため無関心を装っている。その代わり、誰もいないところでは彼女の味方として振る舞い、自身が所属する文芸部の部室に、彼女の居場所を作ってあげる。

 信者ビジネスを題材にした異色の学園ドラマとして始まる本作だが、人間関係の背後にあるスクールカーストの描写と、その現実を当たり前のこととして受け入れている高校生の描き方が何より生々しいというのが、原作漫画を読んだ時の第一印象だった。

 クラスで不気味がられ孤立していた郷田るなだが、ケンショーだけは、信者ビジネスに興味を持って話しかけてくる。彼の家はあまり裕福ではないため、大学には進学せず、事業を立ち上げて自己実現したいと考えていた。だからこそ、信者ビジネスで稼いでいる郷田るなを尊敬すると同時に、自分にもビジネスができないかと考えているのだが、スクールカーストという学校内の人間関係だけでなく、学校の外側にある経済格差がしっかり描かれているところも、本作の侮れなさだ。

 やがて、るな達は、文化祭までの間に、一番多く稼いだ人の言うことを聞くという、ビジネスバトルをおこなうことになる。

 ケンショーはまず500円で「悩み相談」を聞く商売を始める。次第に彼に好意を持つ女子生徒たちが大勢、集まってくるのだが、ケンショーは少しずつ値段を釣り上げていく。

 一方、るなは、女子生徒たちの悩みを聞いて救いの言葉を与えることで、自分の信奉者を少しずつ増やしていく。

 つまり、ケンショーはホスト、るなは教祖として振る舞うようになっていく。

 高校時代のエピソードは後半に描かれる社会人編の前哨戦で、大人になったるなとケンショーが展開する大規模な信者ビジネスと比べると「ごっこ遊び」の世界だが、高校内の人間関係が信者ビジネスに回収されていく構造は実にえげつない。

 それは、るなが恋愛相談に乗ったことで一番の信奉者へと変わっていく大内塔子(影山優佳)や、ケンショーに相談するお金を稼ぐために、るなに助言されて男子生徒におっぱいを揉ませて3000円をもらうビジネスをおこなう森尾典子(駒井蓮)の姿に強く表れている。るな達の信者ビジネス対決に取り込まれていく他の高校生たちの姿も細かく描かれているのが『るなしい』の恐ろしさだが、本作の信者ビジネスは、推し活ビジネスと言い変えることも可能だろう。

 劇中では、女子生徒が男に翻弄される恋愛の苦しみを信者ビジネスで解消するという展開が繰り返される。金銭の絡まない純粋な恋愛感情に、金銭によって愛情を買う「推し活」的な信者ビジネスが勝利する様子が繰り返される『るなしい』を観ていると、これが令和の青春であり現実なのかと、戦慄する。

 この信者ビジネスとしての「推し活」と恋愛感情の衝突こそが、『るなしい』の大きなテーマだ。ひと昔前なら、金銭の絡む「推し活」(信者ビジネス)よりも、金銭が絡まない素朴な恋愛感情こそが素晴らしいという方向に着地しそうな対立だが、原作漫画では、そういった常識を揺さぶり、意外な場所へと着地した。果たしてドラマ版『るなしい』は、推し活と恋愛の闘いにどのような決着をつけるのか。続きが楽しみである。

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