作間龍斗、生声の魅力に注目! 『ながたんと青と』で見せた、漫画実写化ドラマでの実力

擬声語では表現しきれない生の声の力

「ギヤァァァ」であるとか、「ズキュゥゥゥン」といった、力強い音の響きは漫画作品によくある表現だが、こうした文字の擬声語では表現しきれない生の声の力がやっぱりある。だからこそ、実写化作品があるといっても過言ではないだろう。

 磯谷友紀による原作漫画を実写化した、2023年のドラマ『ながたんと青と-いちかの料理帖-』(WOWOW)はまさに、生身の俳優の声が作品に底力を吹き込んだ。底から全体を支えるように、ディープな声。作品の底流をなす、安定感のある声色。非の打ち所がない、美しいトーン。そんな声の持ち主である作間龍斗が、本作に欠かせない頻出の三文字「うまい」をマジカルなワードに一変させていた。

 舞台は第二次世界大戦後、GHQ占領下の日本である。京都で200年続く老舗料亭「桑乃木」の長女・いち日(門脇麦)を主人公に、和洋が調和する料理ドラマを展開する。発端は、客足が遠のき、閑古鳥が鳴く桑乃木が政略結婚として、大阪のホテル一族の三男を婿に迎え入れたことだった。その三男・山口周役を作間が演じる。

雪見障子を活用した改変の風景

 周の初登場場面が秀逸だ。是が非でも縁談を成立させたい桑乃木側に対して、周は何とも冷ややかだった。原作ではまず、いち日と縁談予定の妹・ふた葉がどんな相手がきたのか、部屋の外から盗み見る場面が置かれる。周が待機する和室の(紙)障子越しに、精悍な後ろ姿が見え、痛烈な毒舌が聞こえてきた。

 一方、ドラマでは縁談場面からすぐ始まるのだが、カメラのポジションが見逃せない。カメラは庭先に置かれ、いち日たちが外から盗み見、盗み聞く位置関係を踏襲している。さらに紙障子越しでない代わりに、下がガラス、上が紙の障子から和室奥に座る周が見えるようになっている。下がガラスになっているのはむしろ室内から外の景色を眺めるためで、これを雪見障子と呼ぶ。

 本作のカメラは逆に、外から雪見障子越しに室内を眺めようとする。画面上手に位置するガラスが、作間演じる周を縁取るためである。原作から実写化ドラマへ、生身の俳優の存在感、それも初登場場面をよりくっきり際立たせるため、雪見障子を活用したさりげない改変の風景が広がる。周の手前には兄・縁(白石隼也)がいて、対面する桑乃木の面々を前に、周と交互にお辞儀するなめらかな動きがすっぽりおさまる、見事なフレーミングだ。

作間龍斗の声は実写化に欠かせない

 この場面で視聴者は周の第一声を聞く。原作のような毒舌(少なくとも第一声に関しては!)ではないが、年齢を聞かれて「19です」と回答する周の声色は、キリッと辛口。身が引き締まるような乾いた音だ。「19」という年齢情報であっても、作間が演じることで、その声色一つが周の性格を的確に表現する。

 彼の役作りは原作の一コマも見落とさない。例えば、15歳も年下でまだ学生である夫・周のためにいち日がもたせた、サンドイッチ弁当を食べる場面。政略結婚による割りきった夫婦関係だと思っていたが、周の胃袋はいち日の料理でつかまれた。大学に弁当を持参できるのも嬉しい。肝心の弁当も旨い。昼食時、開けた瞬間に心が温まる。いち日が朝焼いたばかりのパンにはだし巻き卵が挟んである。それを一口。自然と笑顔がこぼれる。原作ページの上方、ほんの片隅に描かれた周が「もぐもぐ」と微笑む様子も、作間が演じると特別な場面になる。

 続編となる『ながたんと青と-いちかの料理帖-2』(2026)では、すっかりおしどり夫婦が板についた。夫婦で桑乃木を切り盛りする中、いち日の料理もより周の心を温め、支える。周が発する「うまい」や「うまいです」はその都度、微妙にニュアンスが違い、作間の声色が周の成長を細やかに表現していることがわかる。

 いち日の方でも段々周が愛しい存在になり、第5話、いてもたってもいられず、東京で研修中の周に会いにくる名場面がある。エピソードタイトル「甘酸っぱい夫婦のピカタ」を食べた二人は夜の遊歩道を散歩する。そこで愛を確かめる二人は強く抱き締め合うのだが、原作が強く描写するエモーショナルな雰囲気をやや緩めるように、作間があえてフラットに台詞を発しているのがいい。そのことでかえって夫婦の愛を深く印象づけている。作間龍斗の声は実写化に欠かせない。

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