『こころは遺伝する』刊行、遺伝と環境をめぐる議論に迫る科学書 プロローグ7000字が一挙公開
ロバート・プロミンによる『こころは遺伝する DNAはいかに〈わたし〉を形づくるか』(河出書房新社)が3月27日(金)に発売された。
「生まれか育ちか(遺伝か環境か)」を明らかにした『こころは遺伝する DNAはいかに〈わたし〉を形づくるか』。ロバート・プロミンがはじめて一般読者へ向けて著したポピュラーサイエンス書となっている。『こころは遺伝する』の発売記念としてプロローグ7000字が一挙公開された。
プロローグ
新しい占いがあるという。その占いは、人がうつ病や統合失調症などの心理的な形質〔性質や特徴〕のリスクをもっているか、どれくらいの学業成績をおさめそうかを予測できるという。そんな話を聞いたら、あなたはどう思うだろう?それだけではない。その占いは人が生まれた瞬間に、将来どのくらいの財産を築けそうかも予測できるらしい。信頼性は申し分ないうえに、バイアスもなし。おまけに、費用はたったの100ポンドだ。
あなたの人生を変えるとかなんとかいう仕掛けについてのありがちなポピュラー心理学の主張みたいに聞こえるかもしれないが、実際のところ、この占いは最先端の科学にもとづいている。この占いが拠り所とするのはDNAだ。近年、個人ゲノム解析の急速な進展により、私たちはDNAを手がかりに、自分がどんな人間なのかを理解し、将来どんな人間になりそうなのかを予測できるようになった。本書はこのDNA革命について紹介する。この革命によって、生まれた瞬間に、その人の心理的な強みや弱みを予測することが可能になり、DNAは私たちにとってきわめて個人的な問題になった。DNA革命はまさに、心理学や社会、私たち一人ひとりにとって途方もなく深い意味をもつゲームチェンジャーなのだ。
このDNA占いは、「自分らしさ」を形づくるものの正体を突き止めようとする一世紀にわたる遺伝学研究の集大成である。20世紀初頭に心理学が科学の一分野として誕生したとき、この分野が注目していたのは、人の行動に影響を与える環境要因だった。心理学では何十年ものあいだ、人格は経験によって形成されるとする環境決定論が主流だった。フロイト以降、家庭環境、いわゆる「育ち」が、どんな人間になるかを決定づける主要な要因と考えられてきたのだ。しかし1960年代に遺伝学者がこの考えに異を唱えはじめた。精神疾患から知的能力に至るまで、さまざまな心理的形質は明らかに家系で受け継がれているものの、家族のメンバー同士の類似性は「育ち」だけによるのではなく、むしろ「生まれ」、すなわち遺伝によるのではないかという認識が徐々に広がっていった。なぜなら子どもは遺伝的に、親に50%ほど似ているからだ……
続きはWeb河出にて公開:https://web.kawade.co.jp/tameshiyomi/200693/
著名人からのコメント
本書は、控えめに言っても「革命」である。私たちが当たり前と思ってきたさまざまな概念(平等、公正、能力、疾患、教育、努力など)の前提が変わる。遺伝を否定することが「良識」だった時代は終わったのだ。事実は不快であることもあるが、そこから逃げることは、もはやできない。――安藤寿康(慶應義塾大学名誉教授、「解説」より一部抜粋)
最も注目を集める科学分野について、最も著名な世界的権威が書いた、最も魅力的な一冊――スティーブン・ピンカー(ハーバード大学教授)
米・ガーディアン紙年間ベストブックに選出
一度本書を読んでしまえば、二度と同じ目で世界を見れなくなる。――《ガーディアン》紙
生まれたばかりの赤ちゃんが、うつ病や不安神経症、統合失調症にどれだけなりやすいかを、もうすぐ特定できるようになるだろう。その赤ん坊が、読み書きに困難を感じたり、肥満になったり、晩年にはアルツハイマー病を発症しやすいかどうかも、わかるようになるだろう。果たしてこれは、“グッド・ニュース”だろうか?――スティーヴン・ミズン(英レディング大学教授)
目次
プロローグ
第Ⅰ部 なぜDNAが重要なのか
第1章 「生まれ」と「育ち」を切り離す
第2章 なぜDNAが「自分らしさ」を形づくるといえるのか
社会実験―養子縁組
生物学的実験―ふたご
第3章 環境のなかの遺伝
第4章 年齢を重ねるほど、遺伝率は高まる
第5章 異常は正常である
第6章 ジェネラリスト遺伝子
第7章 同じ家庭の子どもたちはなぜこんなにも違うのか
第8章 DNA青写真(ブループリント)
親は重要だが、違いは生まない
学校は重要だが、違いは生まない
人生経験は重要だが、違いは生まない
第9章 機会均等と能力主義
第Ⅱ部 DNA革命
第10章 DNAの基礎知識
第11章 遺伝子ハンティング
第12章 DNA占い
第13章 「自分らしさ」を予測する
第14章 未来はDNAにある
エピローグ
ペーパーバック版あとがき
謝辞
解説 遺伝はタブーではなく、事実である 安藤寿康
原註
著者
ロバート・プロミン(Robert Plomin)
キングス・カレッジ・ロンドン精神医学研究所教授。行動遺伝学の世界的権威。行動遺伝学会の会長に史上最年少で就任。2002年、同会からその卓越した生涯研究に対してドブシャンスキー記念賞を授与された。
訳者
田中文(たなか ふみ)
翻訳家、医師。東北大学医学部卒業。訳書にムカジー『がん―4000年の歴史(上・下)』『遺伝子―親密なる人類史(上・下)』『細胞―生命と医療の本質を探る(上・下)』(以上、早川書房)などがある。
■書誌情報
『こころは遺伝する』
著者:ロバート・プロミン/訳:田中文
価格:2,640円(税込)
発売日:2026年3月27日
出版社:河出書房新社