スティーヴン・キング小説の映画化がブームに? 今後の日本公開作『サンキュー、チャック』と『ロングウォーク』にも注目

 キング・オブ・ホラー、スティーヴン・キングの小説の映画化が近年ブームになっている。これまでに67冊の長編&中編小説と、200を超える短編小説を発表し、計4億部以上の売り上げを記録しているキングだが、彼の作品をベースにした映画といえば、『キャリー』(76)『シャイニング』(80)『スタンド・バイ・ミー』(86)『ショーシャンクの空に』(94)などが有名だが、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)の大ヒット以降キング作品の映像化が一気に加速。2019年から25年までの7年間で、12本の映画が製作されるという驚くべき事態になっているのだ(同様に数多くのTVドラマも製作されている)。

 今年も、まず1月に『ランニング・マン』(25)が日本で封切られた。これはキングが1982年にリチャード・バックマン名義で発表したディストピア・スリラー小説の再映画化で、最初の映画はアーノルド・シュワルツェネッガー主演で『バトルランナー』(87)という邦題で公開された。同作がケレン味たっぷりのバイオレントなサバイバル・アクションだったのに対し、エドガー・ライトがメガホンを取った『ランニング・マン』は、より原作小説に近い内容で、10億ドルの賞金獲得のため人気リアリティTV番組に参加した男の命懸けの逃走劇を追ったSFアクションに昇華されていた。舞台は原作が2025年だったのに対し、『バトルランナー』は2017年。『ランニング・マン』の舞台は近未来ということ以外は不明だが、映画は偶然にも2025年にアメリカで封切られた。

 そして今後も『サンキュー、チャック』と『ロングウォーク』という、2本のキング原作の最新映画が日本で公開になる。

 『サンキュー、チャック』(5月1日公開)は、2020年に発表された中編小説「The Life of Chuck(原題)」を基にしたトム・ヒドルストン主演のファンタジードラマ。チャックという名の謎の男の生涯と人類の滅亡を組み合わせ、時系列を一部入れ替えて描いたエモーショナルでオプティミスティックな感動作だが、もちろんホラー的な描写も含まれている。同作でメガホンを取ったのが、マイク・フラナガン。『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』(19)や、1992年に刊行された同名小説をベースにしたサイコロジカル・ホラー『ジェラルドのゲーム』(17)といったキング原作の映画でも監督を務めた、キングの熱烈な信奉者だ。フラナガンの最新作は、キングの代表作の一つでもある「キャリー」を基にしたTVドラマ「Carrie(原題)」で、こちらは2026年に配信予定。さらにキング原作の2本、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」にも多大な影響を与えたニヒリスティックな衝撃作『ミスト』と、『ダークタワー』の再映画化の監督を務めるという噂もある。続報を待ちたい。

 『ロングウォーク』(6月公開)は、キングがメイン大学在籍中の1966年頃に執筆した同名の処女小説(アメリカでの発売は1979年。名義はリチャード・バックマン)の映画化だ。全体主義が支配するディストピアな近未来のアメリカを舞台に、100人の若者たちが一定のルールに則って最後の一人の勝者(=生存者)になることを目指し、ひたすら歩き続ける死のウォークを描いた、エモーショナルな要素もあるサバイバル・ホラー。当初はジョージ・A・ロメロやフランク・ダラボンも候補に挙がっていたが、最終的に監督を務めたのがフランシス・ローレンス。リチャード・マシスンの小説を基にしたSFホラー『アイ・アム・レジェンド』(07)や、スーザン・コリンズの人気ヤングアダルト小説をベースにしたディストピアなサバイバル・アクション『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』(15)、ジェイソン・マシューズの小説を基にしたスパイスリラー『レッド・スパロー』(18)などでメガホンを取った人物だ。ちなみに、マーク・ハミルが『サンキュー、チャック』と『ロングウォーク』の両作で、それぞれ重要な役どころで出演している。

 今後も短編ホラー小説「第四解剖室」と、9歳の少女が主人公のサバイバル小説「トム・ゴードンに恋した少女」の映画化、狂犬の恐怖を描いた長編ホラー小説「クージョ」の再映画化、壮大なファンタジー小説「フェアリー・テイル」のTVドラマ化(製作はあのA24)など、キング原作の作品が続々と製作される予定だ。

 スティーヴン・キングは、昨年クライム小説「Never Flinch(原題)」を発表したが、2026年10月6日にはファンタジー小説「タリスマン」シリーズの3作目にして最終章「Other Worlds Than These(原題)」がアメリカで刊行される(シリーズ過去2作と同様ピーター・ストラウブとの共著)。以前、キングの盟友でもある作家ジャック・ケッチャム(「隣の家の少女」)に会った時「あいつ(キング)は、ヘヴィメタルやハードロックを大音量で聴きながら小説を書く」と聞き、仰天したことがあるが、今年9月21日で79歳になる御大キング。今後もロック魂を胸に、スリリングな新作を生み出してくれることを期待したい。

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