オリコン週間文芸書ランキング

【文芸書ランキング】又吉直樹6年ぶり新作長編がランクイン 直木賞・嶋津輝は2週連続V

 2026年2月第1週のオリコン文芸書ランキング(※1)では、1月第4週に続き嶋津輝の『カフェーの帰り道』(東京創元社)が第1位となった。先週分の当コーナーでも同作の内容について言及したが、直木賞受賞後に各メディアで大きな注目を集めて売れ行きを伸ばしているようだ。1月発表の芥川賞・直木賞関連では1月第4週に鳥山まことの『時の家』(講談社、第174回芥川賞受賞作)もランクインしていた。

 芥川賞・直木賞関連以外で注目すべきは、やはり第5位にランクインしている又吉直樹の『生きとるわ』(文藝春秋)だろう。「文學界」に連載されていた作品を単行本化したもので、長編小説としては約6年ぶりの新作となる。ちなみに又吉の小説家デビュー作であり、第153回芥川賞受賞作である『火花』の文春文庫版の帯は現在『生きとるわ』の刊行に合わせたものになっており、そこには「話題沸騰の最新刊『生きとるわ』著者の原点」という文言が入っていた。

 『生きとるわ』は2023年、阪神タイガースのセ・リーグ優勝決定で沸く大阪の道頓堀から幕を開ける。語り手である公認会計士の岡田は、高校時代の友人だった横井とぐうぜん再会する。岡田は横井に500万円もの大金を貸しており、岡田以外の仲間からも金を借りておきながら行方をくらましていたのだ。当然ながら岡田は横井に金の返済を求めるのだが、話は思わぬ方向へと転がっていくことになる。

 デビュー作『火花』は売れない芸人と、笑いについて独自の哲学を持つ先輩芸人との関係を描いた小説であり、“お笑い”についての思索が込められた芸人小説だった。お笑い芸人である自身が直接的に投影された作品でもあったわけである。『生きとるわ』は芸人小説ではないものの、人間のどうしようもなく愚かな部分を、笑いを交えながら悲喜劇のように描いていく点に特徴がある。語り手の岡田は横井が如何にろくでなしであるのかを十分に知りながらも、横井との奇妙な縁を断ち切ることが出来ない。愚かという言葉だけで切り捨てることの出来ない、人間の滑稽で複雑な姿を捉えようとする。その意味では『生きとるわ』も、笑いについて思索し続ける芸人・又吉直樹の顔が浮かび上がる小説だと言えるだろう。

※1 https://www.oricon.co.jp/rank/oba/w/2026-02-16/

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