『カグラバチ』なぜ世界1位のヒット作に? 新たな“覇権アニメ”になりうる3つの要素とは

 「週刊少年ジャンプ」で連載中の外薗健による人気漫画『カグラバチ』の単行本10巻が、1月5日に発売され、ついに二桁という大きな節目に到達した。連載開始直後から日本のSNS以上に海外のファンコミュニティが爆発的に反応し、異例のスピードで「ジャンプの次代を担う看板候補」と話題を呼んでいる。なぜ本作は、これほどまでに国境を越えて熱狂を巻き起こしているのだろうか。

 第1話が配信された直後、海外のマンガ配信サービス「MANGA Plus by SHUEISHA」では、『ONE PIECE』らを抑えて世界閲覧数1位(2023年9月期・英語版)を記録。当初、それは一部のネットミーム的な盛り上がりも含まれていたが、2024年8月に発表された「次にくるマンガ大賞 2024」コミックス部門において見事第1位に輝いたことで、その評価は「本物」へと変わっていった。

 この熱狂をさらに加速させたのが、水面下で進んでいるとも言われているメディアミックスへの期待だ。近年ヒット作品の多いジャンプ系原作は制作会社の奪い合いだろうが、本作の動向には業界内外から熱い視線が注がれてきた。一部報道では、サイバーエージェントと松竹の強力なタッグによるプロジェクトも取り沙汰されており、制作についても高品質な映像美に定評のあるCygamesPicturesの名が挙がっている。海外でのバズり方が飛び抜けている本作をどのチームが、どのように映像化するのか。「次なる展開」はファンの関心の的になるだろう。

 海外ファンがまず衝撃を受けたのは、外薗健の画力と、「シネマティック(映画的)」なコマ割りである。本作の戦闘シーンは、漆黒の金魚が舞い、斬撃が走る瞬間のコントラストといった「黒」の使い方や、抜刀直前の静寂にコマを贅沢に使う「間」の美学、そして足元からの煽りや極端な寄り引きを多用したアングルなど、キャラクター同士のぶつかり合いを超えた演出がなされている。これらは“アメコミ的”なダイナミズムと、黒澤明作品に代表される往年の日本映画の渋みが融合したようでもあり、セリフに頼らず「画」で語る手法は、言語の壁を容易に超えて海外読者に強烈なインパクトを与えた。

 日本刀を主題にした作品は数多くあるが、『カグラバチ』で描かれる「妖刀」の設定は、現代的なダークファンタジーとして洗練されており、主人公・チヒロが抱える「父を殺され、奪われた刀を取り戻す」という構図もリベンジ・アクション映画に親しみのある海外層にとって受け入れやすい土壌があったと推察できる。

 チヒロのキャラクター性も異質だ。近年のジャンプ作品では、明るく前向きな主人公や葛藤を吐露する主人公が主流だが、チヒロは徹底して「寡黙」で「プロフェッショナル」である。激しい怒りを抱えながらも、表には出さず淡々と任務を遂行する感情の抑制や、口では突き放しながらも弱者を守るために一切の容赦なく敵を斬るその姿は、かつての『幽☆遊☆白書』や『BLEACH』のキャラクターたちが持っていた、どこか影のある「格好良さ」を彷彿とさせる。物語が深まるほど、読者はその「静かなる怒り」に強く共感するに違いない。

 本作が長期にわたって愛されるポテンシャルを証明した背景には、伝統的モチーフの現代化、徹底した画面構成、そしてストイックな物語という、3つの要素が噛み合った結果としての「様式美」がある。

 2020年代の覇権の枠に、今まさに収まろうとしつつある『カグラバチ』。その研ぎ澄まされた「様式美」が、次はどのような衝撃を世界に与えるだろうか。

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