不良漫画の金字塔『クローズ』『WORST』 単行本勢が知らない「鈴蘭32期一年戦争」の“その後”
1990年から続く不良漫画の金字塔『クローズ』『WORST』の正当続編が2026年1月13日発売の「ヤングチャンピオン」からスタートすることが発行元の秋田書店から発表された。髙橋ヒロシが同シリーズの原作・作画を務めるのは『WORST』が完結したのは2013年以来、実に約13年ぶりとなる。
“カラスの学校”との異名を取る不良の巣窟、鈴蘭男子高校を舞台に男たちのぶつかり合いと青春を描いた同シリーズは、坊屋春道(第25期生)が主人公の『クローズ』、その後の時代を継いだ月島花(第29期生)を主人公とする『WORST』へと展開。実写化・アパレル・ゲーム化などメディアミックスでも爆発的な人気を獲得し、「外伝」という名のスピンオフを含めた累計発行部数は9000万部を突破している。
特設サイトとティザームービーも公開された。映像には鈴蘭らしきシルエットが映し出され、舞台が再び「カラスの学校」に戻ることが示唆されており、髙橋の“本編シリーズ”帰還は長年の読者のみならず、その世界観に触れた若い読者からの期待値も高まっている。
そんな『WOST』には、実は単行本勢にもほとんど知られていない“幻の外伝”が存在する。それが“鈴蘭32期一年戦争のその後”を描いた「WORST外伝 鈴蘭、健在なり!」だ。これは新装版『WORST』15・17・19巻に収録された読切で、花たち29期と、留年していた花木九里虎が卒業し、“鉄腕ツトム”こと大善努が3年へ進級。再び群雄割拠となった鈴蘭に、九里虎と同期の実力者であった黒澤和光の実弟・黒澤寿光が入学する場面から物語は始まる。
兄とは違い成績も悪くなく、普通に進学校へ進むつもりだった寿光。しかし、東京にいる和光から「鈴蘭に行って漢になってこい」と背中を押され、迷いながらも鈴蘭を選ぶ。学校では右を見ても左を見ても喧嘩ばかりという“鈴蘭の濃度”に面食らうものの、一年戦争でタイロンに敗れた国吉雅久と遭遇した流れで、強制的にタイロン一派入りすることに。その後、国吉が一年戦争に参加しなかった“3人の実力者”杉戸明、村瀬常斗、そして最強のライバル候補・遠藤力男を紹介すると、寿光はビビるどころかワクワクが止まらない。
そこへ現れるのがツトムだった。タイロンがその強さに反応し挑もうとするのを国吉と寿光が止めたが、その帰り道では武装戦線のメンバーが登場。鈴蘭の頂点を取っても終わりではなく、その先にさらに広がる闘いの世界に寿光は胸の高鳴りを抑えられない。そして、後に「タイロン一派に黒澤あり」と言われるほどの切れ者として名を轟かせる寿光の“はじまり”が描かれたエピソードとなった。
派閥を持たない一匹狼だった和光との対照構造と共に、脇役の目で鈴蘭を見せる演出はさすがの髙橋節と言える。
本作でとりわけ読者を前のめりにさせたのが、『WORST』のラストに登場した2年生(31期)の宮本三文とタイロンの激突。決着は語られていなかったが、キャラクターブックの巻末漫画『最後のWORST』では、竜胆高校に編入してきた伊調一(イーピン)が自作の“戸亜留市喧嘩ランキング”の10位から順に喧嘩を吹っかけていくという設定があり、ここでは1位・三文、2位タイロンとなっていたことから勝負は三文が勝った可能性が高そうだ。
ともあれ、「鈴蘭、健在なり!」は物語の密度やキャラの輝きは本編クラスの迫力ながら、続編として展開するには明らかに尺が足りなかったたことで、「これを書くなら本編の続編を!」とファンからの熱烈ラブコールが贈られていた外伝でもある。今回、発表された正当続編が寿光たち32期をメインで描かれるのかは不明だが、本編キャラたちのその後がどうなっているのか、外伝で示された伏線が拾われているのか、そして新時代の鈴蘭を制するのは誰なのか――2026年早々、『クローズ』『WORST』の幕開けが今から楽しみでならない。