【漫画】イケメンで天才の幼馴染、近づきたくないのはなぜ? 好きだからこその葛藤を描く『ミューズに口づけ』

 幼い頃お絵描きに誘った幼馴染は、自分を軽く追い越す絵の天才だった。自身の未熟さを突きつけられる幼馴染の隣は、彼に惹かれる彼女にとって地獄そのもので……。

 天才の隣でもがく女子高生を主人公にした『ミューズに口づけ』が、Xにアップされた (https://x.com/hoshikage_/status/1981291695624044566?s=20)。本作は白泉社刊行の「月刊LaLa」2025年4月号ふろく小冊子「LaLa Star」に掲載された、恋愛漫画だ。

 今回は著者である漫画家・星影氏(@hoshikage_)に、本作の設定や気に入っているポイントについて、話を聞く。(青木圭介)

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『ミューズに口づけ』(星影)

ーー本作の設定が誕生した経緯を教えてください。

星影:最初に、「努力型の人と天才型の人の対比を描きたい」と思ったんです。また私は絵が嫌いになってしまいそうだなと思って美大を目指さなかった経験があり、美大という場所にも興味があったので、その2つを掛け合わせて物語を考えました。

ーー“才能”と“絵や人との関わり”の狭間で悩む設定に、恋愛描写が非常にマッチしているように感じました。

星影:凪沙にとって“絵”は、「やめた方がいいとわかっているけどやめられないモノ」です。ソレで苦しんでいるけど、好きでやめたくない。離れてもいいのに離れられない。絵だけではなく、夢や目標にはそういう依存性のような感覚があると思います。その感覚が、恋愛に似ているなと思ったんです。なのでそこを組み合わせて、1つの物語にしました。

ーー慧をモデルに描いた凪沙の絵が受賞するラストが印象的でした。絵というテーマで、このシーンで表現したかったことは?

星影:絵って、ただ技術があって上手くても賞を受賞できないんです。正しく描けるだけだとあまり目に留まらなくて、そのうえで突出した“何か”が必要なんだと思います。これまでの凪沙の絵は“お堅い絵”というイメージで、突出した何かはありませんでした。でも慧を描いた絵では嫌いな黒い感情と好きな白い感情をどちらも乗せたことで、凪沙は初めて殻を破れたのでしょう。

ーー本作のなかで、星影氏自身が気に入っているポイントは?

星影:凪沙の“地獄感”は描いていて楽しかったですね。凪沙が絵をやめたいと言っても、止めてくれるわけではない。「俺もやめるけどいいの?」って脅してくる感じとか。あと7ページ目の押さえつけるように絵を見せるシーンとか、この辺りの地獄感はいいですよね。私はあまりこういう関係性は描いたことなかったんですけど、担当さんがヤンデレっぽい雰囲気が好きで、「癖が全開の作品を描いてみましょう!」となったんです。描いたらやっぱり楽しくて、シーンとしても気に入っています。

ーー星影氏が漫画を描き始めたきっかけを教えてください。

星影:小学2年生の頃に親が「りぼん」を買ってきてくれて、それで漫画にハマったんです。そこで「りぼん」の作品の真似をして絵を描いたら親にすごい褒められて、絵を描くのが好きになりました。なのでやっぱり、「上手って褒められたい!」っていうのが最初だったと思います。そのまま漫画を描き続け中学3年生の頃に投稿を始めて、17歳の頃に「LaLa」で大きな賞をいただきました。そのあと大学卒業、就職を経て、数年後に「やっぱり漫画を描きたい!」と思い、再び「LaLa」に投稿しデビューしました。

ーー最後に、今後はどのような漫画を描いていきたいですか?

星影:私は学生時代テニス部だったんですけど、中学の頃は上手くなくて。それが原因で部活の人間関係で少し悩んでいたんです。そのとき「私の好きなあのキャラクターだったらこう対処するかも!」とか考えながら、漫画に救われた経験があります。また転校も多く、そのなかでも漫画から勇気をもらったことがありました。なので私も、少しでも読者の方に共感していただけたり、背中を押せたりする漫画を描いていきたいなと思います!

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