歴史研究の記念碑『日中戦争史』が新装版で発売へ 秦郁彦による徹底調査の全貌が再び読める

 秦郁彦による『日中戦争史(新装版)』(河出書房新社)が2025年11月25日(火)に発売される。

 歴史家・秦郁彦による『日中戦争史』。精密な資料調査と厳格な資料批判に基づいて書かれた先駆的業績として評価を得ており、1961年の初版刊行以来、1972年に増補改訂版、2011年には復刻新版も刊行された日中戦争史研究の書籍となる。盧溝橋事件・日中戦争開戦から88年、終戦から80年の節目となる2025年に新装版として『日中戦争史』が復刊される。

 秦郁彦が本研究を始めたのは、東京大学教養学部二年に在籍していた20歳の頃。本書初版刊行の1961年は秦が29歳。この間秦は、数百名にも及ぶ旧陸海軍人など当時の関係者への直接取材を行ったほか、膨大な量の戦争関連資料を渉猟することで、入手困難で貴重かつ、信頼性の高い一次史料を収集した。それらの史料をもとに、日中戦争に関する政治、外交、軍事、経済の各分野を多角的に分析してまとめ上げた書籍が、『日中戦争史』となる。

 秦の徹底的な実証主義の実践による学究の成果であるとともに、歴史研究、殊に日中戦争史研究を学問的に体系づけ、その後の研究に大きな道筋をつけた記念碑的な著作となっている。

 本書巻頭に掲載される1961年に秦が執筆した「著者序」も特別掲載。秦がどのようにして日中戦争史研究を志したのか、そして当時の研究環境から資料収集、調査まで記載されている。

著者序:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001073.000012754.html

目次

(章・節番号は、本書では漢数字で表記していますが、下記ではアラビア数字で表記)

はしがき
日中戦争史研究の「筋道」(広中一成)/復刊にあたって(秦郁彦)/著者序(秦郁彦)

第1章 梅津・何応欽協定
1 序
2 梅津・何応欽協定交渉の経緯
3 土肥原・秦徳純協定
4 協定の国際的側面
第2章 華北分離工作の失敗
1 序
2 広田三原則
3 華北自治運動
4 幣制改革
5 最後の日中外交交渉
6 綏遠事件
7 中国本土統一の進行
8 日中戦争直前の対華外交
第3章 日中戦争 ―和平工作と講和条件をめぐって―
付 その他の和平工作
第4章 盧溝橋事件 ―七月七日夜から八日夜まで―
第5章 日中戦争における拡大派と不拡大派
1 はしがき
2 盧溝橋事件
3 七月八日の情況
4 七月九日の情況
5 七月一〇日の情況
6 七月一一日の情況
7 七月一三―一八日の情況(両軍対峙期)
8 七月一九―二九日の情況(事態悪化期)
9 第二次上海事変
10 世論とジャーナリズムの動向
11 総合的検討
第6章 日中戦争をめぐる列国の動向
第7章 軍事作戦概史
1 華北の戦闘
2 上海および南京作戦
3 徐州および漢口作戦
4 昭和一四―一六年の軍事作戦
第8章 戦前期における日本の海外投資の展開過程
1 はじめに
2 日本帝国主義の成立
3 西原借款
4 満州事変
5 日中戦争
6 終戦―海外投資の総決算―

あとがき
付録資料
関連資料翻刻/年表/陸海外等主要職員一覧表/関係主要外交官、陸海軍人の略歴/参考文献/索引

■著者紹介
秦郁彦(はた・いくひこ)
1932(昭和7)年、山口県生まれ。1956年、東京大学法学部卒業。ハーバード大学、コロンビア大学留学、大蔵省財政史室長、プリンストン大学客員教授、拓殖大学、千葉大学教授を経て、日本大学法学部教授を2002年に退職。法学博士。
主な著書に『軍ファシズム運動史』(河出書房新社、復刻新版2012年)、『昭和天皇五つの決断』(文春文庫、1994年)、『南京事件―「虐殺」の構造』(中公新書、増補版2007年)、『盧溝橋事件の研究』(東京大学出版会、1996年)、『日本人捕虜』上下(原書房、1998年)、『日本陸海軍総合事典』(東京大学出版会、第二版2005年)、『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999年)、『靖国神社の祭神たち』(新潮選書、2010年)、『日本近代史12の謎を解く』(PHP 研究所、2024年)などがある。
『昭和史の謎を追う』上下(文春文庫、1999年)で1993年度菊池寛賞を受賞。

■書誌情報
『日中戦争史(新装版)』
著者:秦郁彦
価格:7,920円(税込)
発売日:2025年11月25日
出版社:河出書房新社

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