安堂ホセの新作がフランス文学賞受賞「言語の種類を超えて、何か伝わるものがあったら嬉しい」

 安堂ホセ『迷彩色の男』(フランス版 L'Homme Camouflage/翻訳者 レオノール・シイナ)が、フランス発の文学賞・国際ゲイ小説賞(Prix International du Roman Gay)の外国小説部門(Prix du Roman Étranger 2025)を受賞したことが現地時間11月13日(日本時間11月14日)に発表された。

 国際ゲイ小説賞は、2013年にパリの出版社エディシオン・デュ・フリゴ(Éditions du Frigo)とジェラール・ゴーイエ(Gérard Goye)によって創設された国際文学賞。LGBTQIA+の物語・視点・アイデンティティを表現する作品を授賞対象とし、2024年よりベルギーの非営利団体カパックス・アンフィニティ(Capax Infiniti)に運営が引き継がれ、ステファン・マトン=ヴァンを中心に、ベルギー・ブリュッセルを拠点として活動が継続されている。

 今年度の外国小説部門は、ナヴィド・シナキ『Les larmes rouges sur la façade』(邦訳刊行未定)との同時受賞となった。なお最優秀賞はアルチュール・カーン『Berceuse pour Octave et Paul』(邦訳刊行未定)が受賞した。

■作品紹介
被害者1人、瀕死。容疑者20人、逃走。
男性限定クルージングスポット「ファイト・クラブ」で暴行された男。
ブラックボックス化した事件がトリガーとなり、混沌を増す日常、醸成される屈折した怒り…
快楽、恐怖、差別、暴力ーー
折り重なる感情と衝動が色鮮やかに疾走する圧巻のクライム・スリラー。
2023年「文藝」秋季号に全文発表し、同年9月に単行本刊行。第45回野間文芸新人賞、第170回芥川賞の候補作。

■安堂ホセ受賞スピーチ全文
この度は素敵な賞に、僕の二作目の小説、『迷彩色の男』(フランス語版:L'Homme Camouflage ロム・カムフラージュ)を選んでいただき、嬉しく思っています。ありがとうございます。
僕は日本語で小説を書いているんですが、 どの作品も一番最初に翻訳をしてくれたのが、フランスのファイヤール(Fayard)という出版社でした。今回の結果は、ファイヤールの皆さん、エージェントのニュー・リバー・エージェンシー(New River Agency)の皆さん、そして日本の出版社である河出書房新社の皆さん……多くの方に支えられてこのような結果を頂けたことを、本当に嬉しく思っています。そして、翻訳者のレオノール・シイナさんに、改めてお礼を申し上げます。この小説の中では、人物同士の文化的な差異や、コンテクストの差異、断絶が、たくさん書かれているので、それをさらにフランスの言葉に置き換えるのは、かなりご苦労もあったのではないかと感じています。改めてお礼申し上げます。言語の種類を超えて、何か伝わるものがあったら嬉しいなと思っています。もし感想があったら、是非また聞かせてください。それでは、改めてありがとうございました。

■書誌情報
『迷彩色の男』
著者:安堂ホセ
価格:1,760円(税込)
発売日:2023年9月27日
出版社:河出書房新社

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