『ザ・ロイヤルファミリー』×『ウマ娘』が描く“メディアミックスの未来”  年末の有馬記念へ向けコラボ加速中

 TBS系日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』とCygames原作のアニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』のコラボレーションが、この秋もっとも話題を集める異業種メディアミックスとなっている。

 10月下旬に公開されたコラボビジュアル第2弾では、ドラマに登場する架空の競争馬「ロイヤルホープ」と「ロイヤルファミリー」をモチーフにしたウマ娘が描かれ、TBSとCygamesの公式サイトで同時に展開された。この描き下ろしは『シンデレラグレイ』のアニメ制作チームが監修し、アニメのデザイン線とドラマの質感を融合させた完成度の高さが大きな反響を呼んだ。


 10月29日からは東京・ブランチパークでコラボパネル展示が行われ、オグリキャップとロイヤルホープのアクリルスタンドなどオリジナルグッズも販売。SNSでは「ウマ娘が日曜劇場の世界に走り込んだ」「ドラマと二次元が自然に溶け合っている」といった投稿が拡散し、ファンの間で注目を浴びている。

 『ザ・ロイヤルファミリー』は、早見和真による同名小説を原作に、JRA全面協力のもと制作されたヒューマンドラマで、競馬を舞台に20年にわたる人と馬の絆を描く。主演の妻夫木聡をはじめ、佐藤浩市、松本若菜、目黒蓮ら実力派が集結し、実際の競馬場でのレースシーンが「映画のような迫力」と評判を呼んでいる。一方で、『ウマ娘 シンデレラグレイ』は地方から中央競馬へと挑むオグリキャップの成長を描いた青春ストーリーで、実在する競走馬をモチーフとしたキャラクターが多数登場する作品だ。『ザ・ロイヤルファミリー』『ウマ娘 シンデレラグレイ』(第2期)共に10月に放送が始まったことから、コラボ展開がしやすいタイミングだったと見られる。

 コラボはビジュアルやグッズ販売にとどまらず、アニメ『ウマ娘』でオグリキャップ役を務める声優・高柳知葉が『ザ・ロイヤルファミリー』で主人公・栗須(妻夫木聡)の姉役として第1話に声で出演。電話越しに弟を励ますシーンを演じた。SNSでは「オグリキャップの声が日曜劇場から聞こえた」「こういう形のコラボは新しい」といった反応が寄せられ、ファンが両作品を横断的に楽しむきっかけにもなった。

 日曜劇場の主要視聴層は中高年の社会派ドラマファン中心であるのに対し、『ウマ娘』は10代〜20代のアニメ・ゲームファンを核とする層が多い。これまで接点の少なかった世代・文化が、今回のコラボによってひとつの話題を共有したことは業界的にも画期的で、この相乗効果は数字にも表れている。『ザ・ロイヤルファミリー』放送後には視聴率・SNSトレンド・関連グッズの売上すべてが上昇傾向を示し、コラボビジュアルの投稿はアニメファンからの拡散が大半を占めたという。メディア業界では、この成功を「世代を超えたメディアミックスの成功例」として評価する声もあり、TBSとCygamesの取り組みは、従来の“アニメ×実写”の垣根を超える新しいモデルケースになりえる。

 そして、このコラボの最終地点として注目されているのが、両作品が年末の「有馬記念」に向かって歩調を合わせている点だ。『ザ・ロイヤルファミリー』では、主人公たちが目標とする頂点のレースとして有馬記念が描かれ、原作でも物語の大きな節目となる。一方で『ウマ娘 シンデレラグレイ』も、アニメは原作通りならば現在放送中のジャパンカップ編の次には有馬記念が控えており、「週刊ヤングジャンプ」で連載中の原作漫画最新エピソードでも、まさにオグリキャップが有馬記念に挑む直前という展開。年末に行われる現実の競馬界最大の祭典を、ドラマ・漫画・アニメがそれぞれのストーリーで迎えていることから察するに、おそらくはさらなる“仕掛け”が用意されていることだろう。

 現実とフィクション、世代と世代――互いの魅力を補い合う今回のコラボはメディアミックスの新たな形として、他の作品にも波及していきそうだ。

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