【漫画】幼馴染から不意に感じた匂いの正体は? 『馨るはじまり』で描かれる香りと気持ちの変化の関係

 漫画は視覚で楽しむエンタメだが、絵やセリフから視覚以外の五感が刺激されることもある。Xに投稿された『馨るはじまり』は、読んでいると登場人物のふと香る余韻に嗅覚が揺さぶられるBL作品だ。

 香り、もとい馨りをテーマにした本作を手がけた雪原イサナさん(@setsu_gen_)に、制作の背景などを聞いた。(望月悠木)

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『馨るはじまり』(雪原イサナ)

匂いをテーマにした理由

――香水(馨り)がテーマの作品でしたね。

雪原:「感情だけではなく本能的なもので惹かれる物語を描いてみたい」と思い、“匂い”をテーマにしました。

――なぜ“匂い”を選んだのですか?

雪原:人によって匂いの好き嫌いがあったり、動物が互いの匂いを嗅いだりすることから、「生き物として本能的に惹かれる匂いがあるのでは?」と考えて選びました。

――逸が香水をつけていることを圭真が疑うところからストーリーが動き出しますね。

雪原:「良い匂いの正体が好きな人の匂いなんだ」と圭真が気付く瞬間をメインにしたかったので、圭真には何の匂いなのかを探してもらうため、香水を買いに行ってもらいました。それと、漫画で匂いを表現するのは難しいので、「香水に間違えるくらい良い匂いなんだ」と伝えられたらと思って描きました。

――髪の色や性格が正反対の圭真と逸ですが、どのようにキャラクター像は決めていきましたか?

雪原:圭真は自身の初恋にようやく気付くわけなので、“身体は大きいけれど中身の成長がゆっくりな、ちょっとおバカでカワイイ男子”というイメージで考えました。一方、逸はまず圭真と見分けがつくように黒髪に決定。また、何でも顔に出る圭真とは反対で、全て隠し通す性格にしました。

――ラストの圭真が逸にくっついているカットはドキドキしました。

雪原:「とにかく不自然にならないように」と頑張りました。特にラストの2人が寄り添っている姿を全身で描くのは難しかったです。違和感を与える部分があると読み手の意識を散らしてしまい、感情移入してもらえなくなるリスクを考え、資料をたくさん見ながら描きました。

――ちなみに、雪原さんが気に入っているカットは?

雪原:14ページの圭真の表情が気に入っています。逸の匂いが圭真のもとに風とともに届いているように見えれば嬉しいです。

――2人がちびキャラになるカットがところどころ入るのも可愛らしく、作画にメリハリをもたらしていた印象です。ちびキャラと通常のカットは、どのように描き分けていますか?

雪原:おふざけはデフォルメで伝えやすいですね。大切なシーンや深刻なシーンは印象に残るように「しっかり描こう」という意識で臨んでいます。

――今後の漫画制作における展望を教えてください。

雪原:現在、漫画家として生活できることを夢に取り組んでいます。漫画を描くことはとにかく楽しいのですが、実際に仕事になると辛さを感じることもあるかもしれません。それでも一度は漫画家になってみたいです。自分の作品がどなたかの心に残れば幸せです。見かけた時には読んでもらえたらと思います。また、 日々野あいまという名義でも活動しているので、そちらも注目してもらえると嬉しいです。

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