角田光代による初の猫の絵本『ねこがしんぱい』 家族愛のかたちを描いた一冊に
角田光代による初の猫の絵本『ねこがしんぱい』が10月8日(水)にKADOKAWAより発売された。
本作は、角田が実際に暮らす愛猫・トトとの日々をヒントに、「大切な存在を思う気持ち」をユーモラスかつ少しシュールに描いた、家族みんなで楽しめる一冊。物語は、3人と1匹の家族の“しんぱい性な日常”から始まる。両親と少女は、留守番中の猫・たまこを思い浮かべては「ティッシュをぐるぐるにしていないかな」「迷子になって泣いていたらどうしよう」と、次々に心配の種を増やしていく。しかし、家族が知らないところで、たまこはティッシュの雲に乗って空を飛び、遠くの国の友達と遊ぶなど、のびのびと自由な時間を過ごしていた。「心配すること」と「信じて見守ること」の間にある、家族愛のかたちを温かく描き出している。
絵を手がけたのは洋画家・小池壮太。静物画のように静かで穏やかな色彩が、角田の柔らかな語り口と調和し、ページをめくるたびに安心感をもたらす。読み終えたあとには、日々の小さな時間が愛おしく感じられるだろう。
著者の角田光代は『対岸の彼女』で直木賞を受賞、『紙の月』『八日目の蟬』など多くの作品が映像化されている実力派作家。これまでにも猫との暮らしを綴ったエッセイ『今日も一日きみを見てた』で話題を呼び、今回は自身の創作人生で初めて「猫が主人公の絵本」に挑んだ。
■作品紹介
わたしの おうちは、さんにんと ねこの かぞくです。
まず、おとうさんが かいしゃに いきます。それから、おかあさんと わたしが おうちを でます。
ねこの たまこは おるすばん。
わたしは たまこのことを かんがえています。たまこは さびしくないかしら。
おかあさんも おとうさんも たまこのことが、心配でたまりません。
「たまこが ティッシュを だして、ぐるぐるまきに なっていないかな」
「ひとりで 遠くに いってしまって、おうちが どこか わからなくなって 帰りたいのに 帰れなくて、えーんえーんと ないていたら、どうしよう」
かぞくの だれも しらないのです……。
家族が いないとき、たまこが どう過ごしているのか。
ティッシュの雲に のって、遠くへ 飛んでいくことを。
遠い国の友だちと オンラインで 遊ぶ約束だって できることを。
たまこを心配する家族が いそいで家に帰ると、たまこは……!?
■著者紹介
作・角田光代(かくたみつよ)
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で産経児童出版文化賞フジテレビ賞、路傍の石文学賞、『空中庭園』で婦人公論文芸賞、『対岸の彼女』で直木賞、「ロック母」で川端康成文学賞、『八日目の蟬』で中央公論文芸賞、『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、『源氏物語』訳で読売文学賞(研究・翻訳賞)、『方舟を燃やす』で吉川英治文学賞を受賞。他に飼い猫との暮らしを描いたエッセイ『今日も一日きみを見てた』『明日も一日きみを見てる』など著書多数。
絵・小池壮太(こいけそうた)
1977年、東京都生まれ。京都市在住。静謐かつあたたかみのある画風で、静物画や風景画を中心に絵画作品を発表。洋画家として画壇で活躍するかたわら、近年は絵本作家としても活躍の場を広げている。主な絵本の作品に、『おやつトランポリン』『おだんごダイブ』(文・大塚健太、ともに白泉社)、『やすみのひ』(ブロンズ新社)、『文房具のやすみじかん』(文・土橋正)、こどものとも『トマトとなすときゅうりのなつ』(文・木村晃彦、ともに福音館書店)、『しんぶんのタバー』(文・萩原弓佳PHP研究所)などがある。
■書誌情報
『ねこがしんぱい』
作:角田光代
絵:小池壮太
価格:1,760円(税込)
発売日:2025年10月8日(水)
出版社:KADOKAWA