【漫画】高級な鰻を美味しくないと感じたのはなぜ? “食”を通じて母と娘の健やかな関係を描く『うなぎの味』

 高級うな重を初めて食べた新卒女子。「案外こんなもんか」と期待外れだった様子だが、次の週に一味違ったうなぎの味を知ることになり……。

 “食”を通じて親子の絆を描く漫画『うなぎの味』がXにアップされた。本作は、イラストレーターとして活躍するマコカワイ(@mako_illust)氏が描いた作品だ。

 今回は設定誕生の経緯や気に入っているポイントについて、マコカワイ氏に話を聞いた。(青木圭介)

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『うなぎの味』(マコカワイ)

ーー本作を創作した経緯を教えてください。

マコカワイ:基本的にはイラストレーターとして活動しているのですが、漫画制作にもずっと興味があって、去年か一昨年くらいに初めて短編漫画を描いたんです。ありがたいことにその作品がきっかけでいくつかの出版社の編集者さんからお声がけいただいて、今は商業での作品発表を目指して企画を練っています。ただ企画を考えるなかで長く作品を世に出せていないなと気づき、久しぶりにSNSで発表する用に短編漫画を描こうと思って制作したのが本作でした。

ーー発表した際の反響はいかがでしたか?

マコカワイ:本作はインスタグラムで結構話題にしていただいて、コメントも拝見しました。実際に大変な経験をしながらお子さんを育てられたお母さんや、大切な人と食べたモノを思い出したという方からコメントをいただいて、すごく嬉しかったです。

ーー一緒に食べる人や思い出で食事が素晴らしくなるという物語が魅力的でした。どのように思いついた設定なのでしょうか?

マコカワイ:私自身、うなぎに特別な印象があるんです。私が小学4年生の頃に亡くなってしまった祖父との思い出で、すごく覚えていることがあります。当時幼稚園児か小学1年生だった私が家族でお蕎麦屋さんに行ったとき、みんなは普通に蕎麦を食べるなかで、一番年下の私は平気でうな重を頼みました。そのときに、いいよいいよとそれを許してくれたのが祖父だったんです。今になってそれを思い出すと、大切にされていたんだなと温かい気持ちになります。また私が働き始めた頃、たまたま出張で静岡を訪れた際に、浜松に転勤していた父と2人で食事をしたことがありました。2人きりで外食するというのも少し不思議で貴重な体験で、そこでもうなぎを食べました。

 うなぎを出す飲食店も多いですし、スーパーでも毎日売っています。それでもあまり日常的に購入しないのは、少し値が張るのもありますが、うなぎには何か“特別さ”みたいなモノを求めているからかなと思ったんです。本作は、そういう体験から着想を得て制作しています。

ーー達成で終わらず、次の目標を立てるラストも前向きで印象的でした。

マコカワイ:私のなかで幼稚園の頃の祖父との思い出に始まり、働き始めた頃の父との思い出があって、人生の節目にうなぎがあるイメージがありました。海外で言うマイルストーンのような感覚で、大きいゴールだけをみるのではなく、中間に小さな目標を用意するだけで人生に希望が持てますよね。その希望を表現したくて、1つのゴールの先にまた新たな目標を作って物語を締めくくりました。

ーー本作のなかで、マコカワイ氏が気に入っているポイントは?

マコカワイ:作品の要所要所で、言葉を発するうなぎちゃんが出てきます。うなぎへの感想にリアクションをしていたり、ラストシーンにも登場したりしています。この抽象的な表現は私なりのチャレンジでした。実は最初線画をしたとき、うなぎちゃんはいなかったんです。しかし完成後に改めて読み返してみたら、なんか普通だなと感じてしまって。決してライトではないお話も、うなぎちゃんがまろやかにしてくれているかなと気に入っています。

ーーイラストレーターとしてご活躍されているマコカワイ氏ですが、絵を描き始めたきっかけは?

マコカワイ:元々は漫画家になりたかったんですけど、中学生の頃初めて作品を1本描きあげたときに、単純に向いてないなと思ったんです。1人でずっと作業するのが辛すぎて、1人ではない環境で創作をしたいなと感じました。そこで大学では映画を学び、卒業してからはCMの制作会社に入ったんです。

 CMの制作を4年ほどした頃に結婚をして、子供がほしいねという話になりました。当時の仕事のスケジュールで子供を育てられる自信がなかったので、仕事を辞めイラストレーターを始めました。退職後の仕事にイラストレーターを選んだのは、仕事の時間が自由で子育てとの相性がよかったのと、中学生の頃に比べて根性がついていて絵を仕事にできると感じたからです。今では当初の夢だった漫画家への道にも進めていて、嬉しく思っています。

ーー最後に、今後の展望を教えてください。

マコカワイ:漫画に関して言うと、今商業デビューを目指して色々と頑張っているので、まずはそこをお披露目したいというのが1番の目標です。

 あとは、私が中学2年生の頃に家庭の事情でアメリカに引っ越した経験があって、当時は英語も喋れず馴染むのに苦労した記憶があるんです。なので同じようなというか、今辛い思いをしている人や苦しい思いをしている人の心の支えに、少しでもなるような漫画が描けたら嬉しいですね。

 もちろん現在メインでやっている、イラストレーターとしての活動も引き続き頑張っていきたいと思います!

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