ファッションウィークに見る“奇抜コラボ”は話題重視、それともアートか

 2025年のニューヨーク・ファッションウィーク(NYFW)は、例年以上に“話題先行型”のショーが目立った。ドレッシングメーカーとの協業、ファストフードチェーンとの限定アイテム、さらにはアダルトサイトがスポンサーについたショーまで。奇抜なコラボが次々と発表され、SNSでは「斬新で面白い」という好意的な声と、「節操がない」「ファッションの品位を落とす」といった批判が入り混じっている。

 NYFWは常に「最新のカルチャーを映す場」とされてきた。しかし、今年はとりわけ異業種コラボが目立つ。あるブランドは大手ドレッシング会社と組み、ランウェイに巨大なボトルを設置。別のブランドは人気ファストフードチェーンのロゴを大胆にあしらったウェアを発表し、観客にバーガーを配布した。そして最も議論を呼んだのは、アダルトサイトがスポンサーとなったショーだ。セクシュアルな要素を強調した演出は、「過激な挑発」と「無責任な話題づくり」の両面で大きな反響を呼んだ。

 こうした流れに対し、ある評論家は次のように分析する。「NYFWは商業性とアート性のはざまで常に揺れ動いてきました。今回はその“商業性”が極端に前面化したと言えるでしょう。ブランドがSNSで拡散されることを狙い、刺激的なコラボを選んでいるのです」

変わる「ファッションの役割」

 もっとも、奇抜なコラボレーションは決して目新しいものではない。過去にはマクドナルドやコカ・コーラとの協業、あるいはアウトドアブランドとハイジュエリーの組み合わせなど、意外性を武器にした取り組みは繰り返されてきた。

 ただし今回の特徴は、その境界線を一気に踏み越えたことだ。日常消費の象徴である調味料やファストフード、そしてタブー視されがちなアダルト産業を正面から取り込んだ点は、ファッションが社会のタブーをあえて引き受けているとも言える。評論家はこう語る。「若い世代はブランドの“高尚さ”よりも、“自分たちの生活や文化にどれだけ近いか”を重視します。ファストフードやネットカルチャーとの融合は、そのリアルさをアピールする方法でもある。ただし同時に、“ファッションは何を表現すべきか”という根源的な問いを突きつけているのです」

 今回のNYFWを振り返ると、奇抜なコラボは確かに注目を集めた。SNSでは数百万回単位で動画が再生され、ブランド名は一気に拡散された。しかし、その先にある「ブランドの信頼」や「ファッションとしての評価」がどうなるかは別問題だ。商業的な話題作りに偏りすぎれば、ファッションの本質である創造性や美学が軽んじられる危険性もある。一方で、時代のリアルを取り込み、新たな境界を切り開く姿勢はNYFWらしい挑戦でもある。

 奇抜なコラボは“炎上商法”か、それとも“時代を映す鏡”か。答えは今すぐ出ない。だが、賛否を呼びながらも人々の目を釘付けにしたこと自体、ニューヨーク・ファッションウィークが依然として世界の注目を集める舞台であることを証明している。

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