ポスト・マローンがファッション界に殴り込み? 「Austin Post」パリで初ランウェイを総括

 タトゥーだらけの素顔と独特のメロディセンスで世界的ラッパーの地位を築いたポスト・マローンが、ついにファッション業界へ進出した。自身の本名を冠したブランド「Austin Post」がパリで初のランウェイショーを開催。音楽フェスさながらの熱気に包まれた会場には、ファッション関係者だけでなく音楽ファンやセレブも詰めかけ、ショーは瞬く間にSNSを席巻した。

ヒップホップ×ハイファッションの新境地

 ポスト・マローンといえば、ビール片手にステージへ現れる「ラフなカントリー系ラッパー」のイメージが強い。しかし今回のコレクションでは、その印象を裏切るように、テーラードジャケットやレザートレンチといったクラシックアイテムが目立った。とはいえ随所にダメージ加工やグラフィティ風プリントを織り込み、アメリカンストリートの荒々しさをしっかりと刻印している。

 SNSでは「ポスト・マローンが思った以上にファッショナブル」「音楽と服が地続きになっている」と好意的な声が拡散。一方で「音楽で売れたからってブランド立ち上げは安易では?」と冷ややかな意見もあり、賛否が飛び交った。ファッション編集者の三澤和也氏はこう語る。

 「ラッパーがブランドを手がけること自体は珍しくありません。しかしポスト・マローンは“オフビートな親しみやすさ”を売りにしてきた人物。彼がクラシックなランウェイに挑戦したのは、ヒップホップとハイファッションの垣根を越える大きな実験といえます」

パリを選んだ理由と「ブランド戦略」

 デビューショーの舞台にパリを選んだ点も話題を呼んだ。ニューヨークやロサンゼルスではなく、あえて本場パリで挑戦することで、「Austin Post」を一過性のアーティストブランドではなく、本格的なラグジュアリーレーベルとして位置づける狙いが透けて見える。

 三澤氏は次のように指摘する。「ポスト・マローンはこれまで“飲んだくれアイコン”として消費される側面もありました。パリでのランウェイは、そのイメージを刷新し、文化的権威をまとわせるブランディング戦略です。音楽からファッションへの本気度を示した形ですね」

 実際、会場にはファッション誌の編集長やハイブランドのディレクターが最前列に並び、業界内での期待の高さを物語った。ショー後には「Austin Postは単なるセレブブランドを超える可能性がある」とするレビューも相次いだ。

 「Austin Post」の成功はまだ始まったばかりだ。だが、ポスト・マローンがこれまで築いてきた“親しみやすい反逆児”というキャラクターと、パリの洗練されたランウェイとの組み合わせは、従来のセレブブランドとは一線を画す。

 果たして彼は、音楽と同じようにファッションでも「大衆性と実験性のバランス」を保てるのか。それとも、セレブリティブランドの宿命である「一発屋」のレッテルを貼られてしまうのか。答えは次シーズンのコレクションに託されている。

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