【漫画】女子高校生が“特撮”に青春を捧げる? 風変わりな部活動を描く『怪獣部』が激エモ
初めてプロットから作成した作品
――今回『怪獣部』を制作した経緯を教えてください。
itochin:もともとは今年3月に投稿した「こんな漫画があれば読みたい」というイラストでした。「JKと怪獣の組み合わせって面白そうだな」と。ただ、「本格的に漫画として描こう」という気はなく投稿したのですが、「(続きを)読んでみたい」というコメントをいくつかいただき、勢いで「描きます!」と言ってしまいました。
――ある意味、背中を押されて描いたのですね。
itochin:はい。ただ、そう言ったものの漫画は数えるほどしか描いたことがなかったのですが、期待してくれている人を思うと中途半端には描けないです。なので、初めてプロットから制作を始めました。
——そもそも、なぜ怪獣をメインテーマにしたのですか?
itochin:子供の時から怪獣、特に『ゴジラ』が好きで、特撮、メイキングにも興味がありました。また、好きな作品に『げんしけん』(木尾士目/講談社)があります。マイナーな部活の中で自分たちなりの青春がキラキラしていてとても好きです。『げんしけん』は大学が舞台ですが、より親しみやすさを持ってもらえるかなと思い、本作では女子高生を主役にしました。
——「ハルが怪獣部にスカウトされて撮影に協力する」という展開でしたが、ストーリーはどう決めましたか?
itochin:ハルは初めは特撮や怪獣には全く興味はないのですが、撮影のなかで特撮の楽しさだけでなく、他の部活にはない和やかな雰囲気に居心地の良さを覚えます。また、「好き」に一途な芹沢部長にも惹かれます。世間では「特撮が好き!」という人はかなり少数派です。ただ、「経験してみるとみんな『楽しい』『すごい』ときっと思うはず」という自分の期待も込めてストーリーを考えました。
——青春特有の陰湿さもストーリーのアクセントになっていましたね。
itochin:本作は読切漫画で考えていたので、「ほのぼのというより読み応えのあるものを作りたい」「青春の光と影みたいなものも描きたい」という思いがありました。とはいえ、あまり衝撃が強い絵は描きたくなかったので必要最低限の表現にとどめています。また、志野には嫌な役をさせてしまいましたが、「変に仲直りしないほうがリアルだ」と思い、そのままにしました。
ハルの心情の描き方
――怪獣部のみんなはどのようにして生まれたのですか?
itochin:キャラに個性を持たせることがとても苦手です…。まずは口調、僕っ娘や敬語などでキャラを立たせるようにしました。ビジュアルは基本的に今まで描いてきたイラストのキャラを漫画用にデザインしています。
——ハルの心情を汲みたくなるような繊細な心理描写が印象的でした。
itochin:ハルの心情を描くうえで寄りと引きの構図を使って表現しました。また、ハル自身、多くを語らせず、読者に委ねた部分もあります。
——花火のシーン、ゆあつがとんがりコーンを指にはめて怪獣の手みたいにするシーンなど、微笑ましいカットが多いことも魅力の一つでした。
itochin:「ただ喋っているだけのコマばかりでは退屈だ」と思い、いろいろ描いてみました。楽しげな雰囲気が伝われば良いなと。基本的に「白黒だけで描きたい」と思っていたので花火の光のシーンはいろいろ悩みました。
――itochinさんのお気に入りのシーンは?
itochin:スーツを脱いだハルに、ゆあつがやかんのお茶をあげるシーンです。(笑)また、スーツを焼かれるシーンはあまり衝撃的にしたくなかったため、描くのに苦労したシーンでもあります。
——また、「まだまだ彼女たちの青春は続く」という希望を示すような、入道雲が描かれたラストも好きでした。
itochin:夏っぽく、爽やかに終わらせたいという思いからラストのカットは決めました。夏というだけでキラキラしますよね。
――これからはどう漫画制作を進めていきたいですか?
itochin:絵を見てくれた人の心に、小さくも花が咲けば幸せです! また、現在の活動はXだけなので、まずは「『コミティア』出展」と考えています! 楽しく描き続けていければなと!