【漫画】変なポーズのおじさんは何をしている? 不可思議な街が舞台の『謎の地下空間に降りる』
おじさんのポーズの由来
――不思議な街を散策する女の子の物語でしたね。
真野木目:もともと同人誌を制作するにあたり、「描き下ろしがあったほうがいいだろう」と思って描いた作品です。一つ前の作品が不思議要素のないニュータウンの内容だったので、反動で「その地下に“変な町”があったら面白いかな」と。
――同人誌内でつながりがある内容だったのですね。
真野木目:はい。また、「未来的なニュータウンを建てるために消されてしまった雑多なものや古いものはどこへ行ったのだろう」という着想から方向性を考えました。
――途中でよく喋るおじさんが登場したりなど、ストーリーはどのように作りましたか?
真野木目:本作に関しては、ストーリーはほとんど描きながら考えました。自分自身に不思議な世界へ行きたい願望があるので、「次にどんなことが起きたら楽しいかな」と空想しながらコマを埋めていきました。
――そんなよく喋るおじさんですが、ビジュアルはもちろん、登場時のポーズはインパクト抜群でしたね。
真野木目:「不思議なおじさんはああいう格好だ」という思い込みがあります。恐らく画家のルネ・マグリットの影響です。また、ポーズはアンリ・ルソーの『フットボールをする人々』という絵が好きで、ふいに思い出してマネをしました。
――おじさんのマシンガントークの内容はどう決めましたか?
真野木目:おじさんは新しいものを受け入れたくなく、ずっと地下にいます。また、滅多に人も来ないので不満が溜まっていたため、あのようなマシンガントークになったのだと思います。
お気に入りの看板
――「流しサーモン」「生入りのジュース」など、思わず口に出して読みたくなる看板がクセになりました。
真野木目:あまり関連性がない言葉を組み合わせて看板のワードを考えました。あとは存在しない商売があると「現実とは違うんだな」と読んでる人は自然にそう思ってくれるので、その辺りも意識しています。
――ちなみに特に気に入っている看板はありますか?
真野木目:「目入放題」ですかね。縁起が良さそうなので。
――“終末感”のある街のデザインも魅力的でした。
真野木目:できるだけごちゃごちゃさせようと思って背景は描いています。ニュータウンとは正反対の無計画な町にしたかったので。
――また、黒電話が乗ったベビーカーなど、作中に登場する物のデザインもユーモラスでしたね。
真野木目:これもニュータウンの対比として古くて使われなくなったものを意識しました。地味なところだとジュースのプルタブが剥がすタイプにしているのもそのためです。
――大変野暮な質問ですが、ラストは「新ニュータウンは無数の旧ニュータウンの上に成り立っている」ということなのですか?
真野木目:新しい町を作り続ける人間の歴史そのものがこの場所にあるような感じでしょうか。自分でもここはぼんやりとしか考えていません。
――最後に今後はどのように漫画を制作していきたいですか?
真野木目:今は目標を見つけるのが目標です。他にも起承転結のある漫画も描いていてそれなりに評価をいただけています。ただ、基本的には変なので賞や持ち込みを狙うにしても、「どこがちゃんと読んでくれるか」ということがわからずに尻込みしているところです。また、ホラーやミステリーも好きなので、そういうのも描いてみたいなと思っています。