『ONE PIECE』唯一無二のスピンオフ『恋するワンピース』なぜ人気? ギャグ漫画がオタクにも認められたワケ
漫画アプリ「少年ジャンプ+」にて2018年より連載されている、『ONE PIECE』の公式スピンオフ作品『恋するワンピース』。スピンオフでありながら『ONE PIECE』の世界観をまったく引き継がず、作品自体にメタ的に触れるギャグ漫画だ。
【写真】誰も見たことがない『ONE PIECE』展覧会 140メートルの壁一面に1110話分の漫画が
本作は、『ONE PIECE』のキャラクターと同じ名前であることから距離を縮める海賊王(ルフィ)と菜美(ナミ)の甘い学園生活が、『ONE PIECE』オタクである嘘風(ウソップ)の登場で崩壊していくドタバタな日常を描いている。
本記事では、ワンピース研究家として知られる神木健児氏に、『恋するワンピース』の唯一無二の魅力を聞く。
「『恋するワンピース』の1番の魅力は、やっぱり『本当に公式か?』と疑いたくなるような破茶滅茶具合ですよね。『ONE PIECE』では過去にも多くのスピンオフが発表されてきたのですが、基本的には作中キャラクターの魅力を前面に押し出した作品でした。しかし『恋するワンピース』はまったく違って、『ONE PIECE』のキャラクターは誰も登場せず、『ONE PIECE』の作品自体をいじり続けるような漫画です。これが公式だからファンも心置きなく楽しんでますけど、内容が一緒で非公式だった場合一気に反感を買ってもおかしくないレベルですよね。その際どいメタギャグを公式で楽しめるのが、ファンからすると嬉しいんです」
漫画ファンからすると、ファン同士で好きな作品の話をしている時間は非常に楽しいモノだ。
「作中に登場する『ONE PIECE』の知識が、非常に深いところを突いているのもファンからすると嬉しいポイントですね。私は『ONE PIECE』オタクと言われるような人間だと思うんですけど、オタクになるレベルでやっと辿り着くような知識がバンバン出てくるんです。読んでいると、作者の伊原大貴先生の『ONE PIECE』愛が伝わってきます。漫画を読みながら、『ONE PIECE』ファンと話しているような楽しさを味わえるのも唯一無二の魅力です」
もちろん『恋するワンピース』は、ただ『ONE PIECE』あるあるを並べた作品ではない。
「『恋するワンピース』は、純粋にギャグ漫画として面白いんですよね。作者の伊原大貴先生は、『守れ!しゅごまる』(2021年連載開始)や『妖怪バスター村上』(2024年連載開始)など、『週刊少年ジャンプ』でも連載経験がある漫画家さんです。『恋するワンピース』も1話のなかで起承転結がしっかりされていて、漫画として満足感があります。ただのファン向けメタスピンオフではなく、『ONE PIECE』をテーマにした面白さと漫画としての面白さが絶妙なバランスなんです。『ONE PIECE』が好きであれば、普段ギャグ漫画を読まない方も楽しく読めると思いますよ」