「ジャンプ+」は令和ホラーの最前線? 次々と連載始まる“変化球”なホラー漫画の人気作
■オモコロでも活躍する漫画家のホラー
実写や漫画、ゲームなど、さまざまな場所で“ホラーブーム”が巻き起こっている現在。集英社のWeb漫画誌「ジャンプ+」にもその波が来ているのか、いくつものホラー漫画が注目を浴びている。
最近話題を呼んでいる作品といえば、3月26日からスタートした新連載『こわいやさん』。作者のカメントツはWebメディア「オモコロ」などで活躍してきた漫画家で、代表作の『こぐまのケーキ屋さん』はSNS上で大きな人気を博した。
『こわいやさん』は『こぐまのケーキ屋さん』と同じく、絵本のようにかわいらしい絵柄やファンシーな世界観が特徴だが、その作風と濃密なホラー描写とのギャップによって恐怖を生み出している。
物語の舞台となるのは、かわいらしい動物たちがさまざまなお店を開いている「どうぶつ村」。そこには“こわい”を売っている「こわいやさん」があり、妙に生々しくとりとめのない怪談が紹介されていく。しかも怪談のなかで奇妙な出来事が起きる際には、突如禍々しい絵柄になるため、ますますギャップが際立つことになる。
ちなみにカメントツは「オモコロ」に寄稿するエッセイ漫画にて、“日常に潜む恐怖”を題材にすることが度々あった。『こわいやさん』ではそんなホラー適性を存分に活かしつつ、かわいいものを描くセンスが融合しており、他に類を見ないような怪作が誕生している。
また、2024年11月29日から連載が始まった『良太は弟を殺した』も注目のホラー漫画だ。作者の名取歩は同作が連載デビューの新人だが、そのショッキングな内容で、第1話掲載直後から大きな話題を呼んだ。
主人公の良太は父子家庭で暮らす中学生で、亡くなった母の代わりに保育園児の弟・愛(ちか)の世話をしている。しかし四六時中面倒を見なくてはならないストレスで、愛に対する憎悪が胸の内に蓄積されていた。親友の隼人に対して「最低だけど本当弟邪魔だなって思っちゃうんだ……」とこぼすほど追い詰められており、ある時彼の前で愛を川に落としてしまう。
当然取り乱す隼人だったが、愛は自力で橋の上に戻ってくる。そして愛がたんなる愛らしい子どもではなく、“異常な存在”であることが徐々に分かっていく……というのが、同作のストーリーだ。
慣れない育児に追い詰められる心情を描いた漫画と見せかけて、想像の範疇を大きく超えていくような展開を連発する、まさに新時代のホラー漫画だ。