社内でキレて雰囲気最悪……話題書から学ぶ『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』
■やっちゃった後の最善のリカバリー方法は?
某テレビ局の異例の謝罪会見。アレを観て、まったく関係ないのに必要以上に「心をザワザワさせた」人は多かったのではないだろうか。
「明日は我が身からもしれない」と――。
とかくキャンセルカルチャーと言われる時代。何かの拍子で周囲の人間や、社会全体からこっぴどく非難され、否定されるリスクが誰しもある。多様性がひろく認められるようになったからこそ、「そんなつもりはなかった」「そういう意味で言ったわけじゃい」と思ってもあとの祭り。些細なコミュニケーションの齟齬は生まれやすく、目の前の相手に「ひどい!」「最低!」「訴える!」などと言われ社会的制裁を受ける危険性を、私たちは常にはらんで生きているからだ。
「コミュニケーションで失敗するのは仕方がない。大事なのはリカバリーすることです」
そんな迷える私たちに福音のような言葉を投げかけるのが本書、『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』(日本実業出版社)だ。
著者の山本衣奈子氏は、添乗員、接客業、クレーム対応の専門家として30社以上で活躍後、「伝わる表現アドバイザー」として年間約180回もの企業研修や公演をおこなうコミュニケーションのプロだ。同書は、そんなコミュ力抜群の著者が、リカバリーに特化して記した一冊。ありがちな24の「やらかし」シーンをあげながら、「そんなときはこうすればいい」とわかりやすくサジェストしてくれる。
たとえば、「いつも遅刻する友人にイライラして、『なんでいつもそうなの? 最低だよね!』とキツい言葉で責めてしまった……」なんて場合。
遅刻を繰り返す友人がどう考えても悪いのだが、キツくそれを責めるのも実におとなげない。言葉は必要以上に人をキズつけることも忘れておきたくないものだ。
そんな「言い過ぎたな…」というとき、「あなたは遅刻ばかりのダメな人間だ」「お前はいつも遅刻して最低だ」と、主語を「相手」にしたユーメッセージを発しがちだ。しかし、そんなときこそ主語を「自分」に変えて、アイメッセージにするのがいい、という。
たとえば「私のことを約束を守っても良い相手だと思われているみたいで嫌だ」とか「(私は)連絡がないと心配になる」といった具合です。もちろん、実のところは、相手の遅刻によってイライラした気持ちは変わらないのですが、もう一枚、気持ちの向こう側を向いてみると、確かにこのような「私が悲しい」「私は心配だ」といった自分の気持ちが、しっかりある。
ただただ相手を責めるだけでは、向こうをただただイラだたせ、反射的反論もされやすい。しかし、しっかりと「私が」「私は」と言葉にして、イラついた理由を示せば、真意が伝わる。
「あなたを責めたいのではなく、私が悲しいから怒っているのです」と伝えれば、相手も聞く耳を持ちやすい。また、責めたあなたも「なぜこんなにイラつくのかな」と冷静に自己分析をせざるを得ないため、頭ごなしに怒鳴るようなコミュニケーションをせずにすむはずだ。
あるいは、「相手が話したあと、それを受けて自分が話しだす際に、『でもさ…』『だけど…』といった否定語ではじめてしまった」場合。
たとえば「次の週末、映画に行こうよ」と誘われただけだのに、「でもさ……」なんて意味なく口走ってしまうことがあるものだ。
こうした「でも」「だって」「どうせ」といった否定語を、山本氏はその頭文字をとって「Dワード」と呼ぶ。本人は否定したい気持ちなんて無いのに、えっと」「あの~」のようなノリで、口癖にしている人は意外と多いものだ。けれど、言われたほうは自分を真っ先に否定されたようで、思った以上にチクッとする。必要以上に、相手をキズつけ、結果として嫌われてしまうのがDワードなのだ。