アニメ化決定『ボールパークでつかまえて!』 プロ野球観戦がしたくなる、異色の“野球漫画”の魅力

 球場を舞台に様々な人間模様が繰り広げられる人気漫画『ボールパークでつかまえて!』(須賀達郎)が2025年に待望のアニメ化が決定した。

 主人公のビール売り子アルバイト、ルリコ役の声優にファイルーズあい、ルリコにたびたびちょっかいを出される熱心なプロ野球ファン村田役を猪股慧士(いのまたさとし)がそれぞれ担当することも併せて発表された。

 作中では野球に関してはほぼ素人のルリコの視点を中心に、プロ野球チーム千葉モーターサンズのホームグラウンド、モーターサンズスタジアムで働くスタッフや球場に訪れるファン、所属選手達のエピソードが1話完結形式で展開される。

 野球マンガといえば実際にプレーを行う選手が主人公として描かれることが多いが、本作はほとんど野球になじみがない読者にもきっと刺さることだろう。アニメ化発表をきっかけに、改めて作品の魅力に触れておきたい。

ボールパークで巻き起こる悲喜こもごもの人生劇場

 ビール売り子1年目の新人ルリコは金髪ロングの派手な見た目が印象的な20歳。いつも輪の中心にいる天真爛漫な明るい性格のキャラクターであり、筆者の個人的観測ではどうやらオタクにも優しいギャルだ。そんなルリコとは真反対のタイプが仕事でうだつが上がらず社畜街道まっしぐら、唯一の癒しがプロ野球観戦という村田だ。

 空いている自由席で1人ゆったり観戦することを好む村田に、バイト始めたてながら持ち前の陽キャオーラ全開で接客するルリコ。照れる村田をおちょくるような態度でにやにやしながら接していた彼女が、村田の元から立ち去り彼の姿が見えなくなった途端に恥ずかしさのあまり赤面してしまうのが2人の出会いだ。

 意気揚々と会話の主導権を握っていたルリコが、実は異性と話すことに超絶緊張してしまうというギャップがたまらない。そして観客と売り子、というともすれば一期一会にもなりそうな関係がゆるく線になって関係性が徐々に深まっていく様も興味深い。

 その他にも、球場の売店の看板娘として笑顔でお弁当を売りさばく山田さんが実はビール売り子に憧れていたり、選手紹介の際にとある選手をいつもイジってアナウンスすることで人気のウグイス嬢が「もうネタがない!」と慌てふためいていたりする姿など、普段は中々見かけることができないであろう球団に関わる様々なお仕事に携わる人の内面を垣間見れることも面白い。

 さらには野球の深いところまで異様に詳しい謎の球団マスコットキャラクター「サン四郎」の正体や、長年球団で働く人間同士の友情など、チームの勝敗やリーグ戦の行方に比べれば決して大きな出来事ではないかもしれない。それでも、球場に関わる様々な人々の想いが読者の中にじんわりと溜まっていく感覚が、ある。

 自分の中のちょっと抜けている部分や受け入れ難いところも包み込んでくれ、優しく拾い上げてくれるだけの度量がボールパークという場所には、確かにあるのだろう。

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