『ONE PIECE』ロキ、本当に太陽の神なのか? 「伝説の悪魔の実」をめぐる謎と「神の天敵」になる可能性

北欧神話のモチーフと重なるロキの設定

  その一方で、ロキの作中での位置付けについては全く別の方向からも考えることができる。彼にまつわる設定は、北欧神話がモチーフだと思われるものが多いからだ。

  そもそもエルバフ自体、北欧神話からの引用が多い。北欧神話ではアース神族やヴァン神族といった神々、あるいはヨトゥン(巨人)などが存在する9つの世界が存在するとされており、それをつないでいるのがユグドラシルという巨木、すなわち世界樹だった。

  それに対して『ONE PIECE』のエルバフは巨人たちが闊歩する島で、その中央には「宝樹アダム」という1本の巨大な樹がそびえ立っている。そして島内はいくつかの層に分かれているらしく、ルフィたちが現在いる雪の降る場所は「下層」にあたるという。ちなみに北欧神話でも、世界の下層には氷の国であるニヴルヘイムが存在した。こうした要素を見るかぎり、作者・尾田栄一郎が北欧神話を意識していることは間違いないだろう。

  そしてそんな北欧神話において、ロキは悪事や悪戯を好むトリックスター的な存在であり、ほかの神々と対立した結果、自身の子であるナリの腸によって捕縛される運命を辿った。『ONE PIECE』のロキも縛られて“磔の刑”になっているため、やはり両者はよく似ているように見える。

  しかも北欧神話のロキは、最終戦争(ラグナロク)において巨人たちを率いて神を滅ぼすために戦ったという。『ONE PIECE』のロキも「世界を終わらせる」とうそぶいているため、こうした逸話をなぞらえたような展開が今後描かれるのかもしれない。

  ところで『ONE PIECE』で神といえば、太陽の神・ニカのほか、天竜人を指す言葉として使われることが多い。とくに印象的なのは、ルフィを始めとする「Dの一族」が、「神の天敵」と呼ばれていることだ。しかし今思えば、これはロキの神話上の役割とそっくりではないだろうか。

  仮定に仮定を重ねるような話ではあるものの、ロキが「神の天敵」としてルフィたちと共に天竜人との戦いに身を投じる……という可能性もゼロではないはずだ。

  とはいえ、ロキやエルバフについては明かされていない情報があまりに多く、今後の展開を予想するのは非常に困難だ。作中でも最大級の重要エピソードとなりそうな「エルバフ編」が、一筋縄で終わるとも思えない。ここから尾田栄一郎流のサプライズが繰り出されるはずなので、さまざまな可能性に想像を膨らませながら本編を追っていきたい。

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